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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成8年9月12日07時26分 石巻港 2 船舶の要目 船種船名 貨物船盛山丸
貨物船神峰 総トン数 498トン 497トン 全長 75.98メートル 登録長
72.06メートル 機関の種類 ディーゼル機関
ディーゼル機関 出力 735キロワット
735キロワット 3 事実の経過 盛山丸は、船尾船橋型貨物船で、船長Bほか4人が乗り組み、メイズ1,485トンの荷揚げの目的で、船首3.32メートル船尾4.61メートルの喫水をもって、平成8年9月11日16時50分石巻港大手ふ頭2号岸壁に右舷付け係留し、翌12日06時30分から揚荷役作業中、07時26分石巻港雲雀野防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から014度(真方位、以下同じ。)2,490メートルの地点で、その左舷前部に神峰の船首部が、前方から80度の角度で衝突した。 当時、天候は霧で風力1の北北西の風が吹き、潮候は下げ潮の末期で、濃霧注意報が発令されていた。 また、神峰は、主に清水港と北海道・東北各港間のバラ積み貨物の運送に従事するバウスラスタを装備した船尾船橋型貨物船で、A受審人ほか4人が乗り組み、大豆粕1,500トンを積載し、船首2.75メートル船尾4.45メートルの喫水をもって、同月10日15時45分清水港を発し、石巻港へ向かい、翌11日20時20分防波堤灯台から149度2,600メートルの同港外で仮泊し、翌々12日07時00分抜錨して、揚荷役岸壁である同港日和ふ頭7号岸壁へ向かった。 ところで日和ふ頭は、防波堤と荷役岸壁とにより囲まれた石巻港奥に位置し、岸壁法線が174度・354度方向で、北側から順番に7号岸壁・6号岸壁と、同ふ頭北端から直角に264度方向に大手ふ頭が築造され、同ふ頭は、東端から順番に1号ないし5号岸壁と名称が付されていた。 A受審人は、当日、石巻港内の視程が霧のため約50メートルに狭められていたが、荷役開始時刻が07時30分であり、また、同港外の錨泊船のうち1隻が港内に入航するのを認めたので、自船も同様に入航できると思い、入航作業を開始した。 こうしてA受審人は、抜錨時から1人で操舵操船に当たっていたところ、甲板上での抜錨作業を終えた一等及び二等の各航海士が昇橋してきたので、レーダー見張り等に就け、機関を微速力前進から半速力前進に増速して港奥に向けて進行し、07時18分少し前防波堤灯台から028度1,250メートルの地点に達したとき、前示各航海士を着岸時の船首配置に就けるため降橋させると共に、針路を大手ふ頭2号岸壁に向首する000度に定め、機関を微速前進に減速して6.0ノットの対地速力で続航した。 ちなみに、A受審人は、過去数回石巻港に入港した経験があり、同日は荷役の都合から左舷出船付けをするよう指示されていたことから、大手ふ頭2号岸壁にほぼ直角に150メートルまで接近して、機関・舵・バウスラスタを併用して右回頭して着岸する予定で操船計画を立てていた。 定針後A受審人は、単独で手動操舵に当たると共に、舵輪の左舷側に設置していたレーダーのレンジを0.75マイルにして正船首方の大手ふ頭及び同ふ頭2号岸壁に着岸している盛山丸を確認しながら進行し、07時22分半防波堤灯台から016度2,080メートルの地点で、一旦、機関を中立として惰力進行したが、その後レーダーによる前路の余裕水域の把握を十分に行うことなく、同岸壁を視認することに気を奪われ、勘を頼りに回頭時機を測っているうち、回頭予定地点を航過して盛山丸に接近していることに気付かず続航中、同時26分少し前回頭予定地点に達したと思い、機関後進・右舵一杯・バウスラスタ右一杯と操作するのとほぼ同時に、神峰は、約2.0ノットの残存速力をもって船首が004度を向いて前示のとおり衝突した。 衝突の結果、盛山丸は左舷前部船側外板及び着岸舷側(右舷側)外板に破口等を生じ、神峰は船首部に凹損を生じたが、のちいずれも修理された。
(原因) 本件衝突は、神峰が、霧により視界が狭められた石巻港内において着岸操船中、レーダーによる前路の余裕水域の把握が不十分で、回頭予定地点を航過して、隣接岸壁に着岸中の盛山丸に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、霧により視界が狭められた石巻港内で、同港大手ふ頭2号岸壁前面海域で180度回頭を行い、同ふ頭と直角に隣接する日和ふ頭7号岸壁に出船左舷付け着岸操船を行う場合、大手ふ頭2号岸壁に着岸中の盛山丸と接近し過ぎることのないよう、レーダーによる前路の余裕水域の把握を十分行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、勘を頼りに回頭時機を測り、レーダーによる前路の余裕水域の把握を十分に行わなかった職務上の過失により、回頭予定地点を航過して盛山丸に接近していることに気付かず、盛山丸に向首進行して衝突を招き、同船の左舷前部船側外板及び着岸舷側(右舷側)外板に破口等及び神峰の船首部に凹損を生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。
参考図
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