日本財団 図書館




1998年(平成10年)

平成10年仙審第18号
    件名
漁船第五興富丸防波堤衝突事件〔簡易〕

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年8月27日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

?橋昭雄
    理事官
黒田均

    受審人
A 職名:第五興富丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船首外板に亀裂を伴う凹損

    原因
船位確認不十分

    主文
本件防波堤衝突は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成7年9月20日02時30分
青森県八戸港
2 船舶の要目
船種船名 漁船第五興富丸
総トン数 59.33トン
登録長 26.08メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 367キロワット
3 事実の経過
第五興富丸は、沖合底びき網漁業に従事する船首船橋型鋼製漁船で、A受審人ほか7人が乗り組み、9月以降八戸港を基地として魚市場の閉鎖される日曜を除いて連日同港沖合漁場で、02時ごろ出航して19時ごろ帰港する日帰りのいか釣り漁を行っていたところ、操業の目的で、砕氷約4トンを載せ、船首1.5メートル船尾3.0メートルの喫水をもって、平成7年9月20日02時00分八戸港第2魚市場岸壁を発し、同港北方20海里沖合の漁場に向かった。
ところで、八戸港は、東航路・西航路の2航路が定められており、西航路は、八戸港白銀西防波堤灯台(以下「西灯台」という。)から延びた白銀西防波堤南東部分と河原木1号ふ頭北東側岸壁及び同岸壁南東端から南東に延びた河原木南防波堤とによって形成された幅130メートルで長さ400メートルの航路であった。
A受審人は、船橋当直をこれまでどおり自らが離着岸から漁場までの往復の航程及び漁労長が漁場着約30分前から操業終了までの間をそれぞれ単独で行う体制を採った。
こうして、A受審人は、離岸後いったん港内を東行したのち、航路幅の狭い西航路を経て港外に向かうことになったが、離岸時から霧のため視程が約100メートルで、視界が著しく狭められた状態であったものの、見張りを兼ねて単独で操舵・操船にあたり、機関を微速力前進にかけて3.0ノットの速力で西航路に向かった。
A受審人は、船橋前部左舷側に据え付けられた遠隔操舵装置の前面に立ち、その右側約3メートル離れたところに据え付けられたレーダーで見張りを行いながら手動操舵で港内を東行した。
02時25分A受審人は、河原木南防波堤南東端から南東方400メートルの地点付近に至り、入航船と左舷を対して至近で航過後徐々に左転して西航路に向けようとしたとき、同時26分西灯台から161度(真方位、以下同じ。)520メートルの地点で、左舷前方近距離で同航路出口付近に入航船らしき灯火を認めて、同航路に沿う予定針路線上に達したものと思い、レーダーにより船位の確認を十分に行うことなく、318度の予定針路に定めたところ、河原木南防波堤南東端に向首する状況となったが、このことに気付かず進行中、同時30分わずか前正船首至近に同端を視認して驚き、急いで機関を全速力後進にかけたが及ばず、02時30分西灯台から200度230メートルの河原木南防波堤南東端にほぼ原針路、原速力のまま衝突した。
当時、天候は霧で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の中央期で、視程は約100メートルであった。
防波堤衝突の結果、船首外板に亀裂を伴う凹損を生じたが、のち修理された。

(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、霧で視界が著しく制限された状態の八戸港西航路から出航する際、船位の確認不十分で、同航路に沿う予定針路に向け、河原木南防波堤東端に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、視界制限状態の八戸港を航路の狭い西航路から出航する場合、同航路入口付近で航路に沿う予定針路線上に達したかどうか判断できるよう、レーダーによる船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、西航路入口付近で左舷前方近距離で同航路出口付近に入航船らしき灯火を認めて、同航路に沿う予定針路線上は達したものと思い、レーダーによる船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、同航路に沿う予定針路に向け、河原木南防波堤の南東端に向首する状況になったことに気付かないまま進行して防波堤衝突を招き、船首外板に亀裂を伴う凹損を生じさせるに至った。






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION