日本財団 図書館




1998年(平成10年)

平成10年函審第28号
    件名
漁船第三十六松嶋丸防波堤衝突事件〔簡易〕

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年8月26日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

大石義朗
    理事官
副理事官 堀川康基

    受審人
A 職名:第三十六松嶋丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
船首外板に亀裂を伴う凹損及び球状船首に凹損

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件防波堤衝突は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年9月11日02時43分
北海道網走港
2 船舶の要目
船種船名 漁船第三十六松嶋丸
総トン数 35トン
全長 26.81メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 588キロワット
3 事実の経過
第三十六松嶋丸(以下「松嶋丸」という。)は、一層甲板型の鋼製漁船で、A受審人ほか6人が乗り組み、きちじ延縄(はえなわ)漁業の目的で、船首1.2メートル船尾2.6メートルの喫水をもって、平成9991700分北海道網走港を発航し、同港北方60海里ばかりの漁場に至って操業を行い、きちじ約400キログラムを漁獲し、翌10日21時00分漁場を発進し、帰航の途に就いた。
A受審人は、漁場発進後1時間ばかり船橋当直をしたのち、甲板長に同当直を任せて休息し、翌11日01時50分網走港北防波堤灯台(以下「北防波堤灯台」という。)から057度(真方位、以下同じ。)6海里の地点で再度甲板長と交替して1人で同当直に当たり、針路を201度に定め、機関を全速力にかけて11.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
A受審人は、網走港を発航して以来、漁場に着いてから翌朝の揚げ縄までの間に約2時間、操業中の07時ごろから09時ごろまでに約2時間、帰航時に約4時間の合計約8時間の休息をとっていたものの、漁のことなどが気になってほとんど熟睡ができず、体調が十分でなかったが、帰航の際の船橋当直を行うに当たり、まさか居眠りすることはあるまいと思い、甲板員を1人呼んで見張りに立て、2人当直として居眠り運航を防止する措置をとらなかった。
02時33分少し過ぎA受審人は、北防波堤灯台から030度1海里の地点で速力を半速力の8.0ノットに下げ、操舵スタンドの後方に立って進行し、同時40分予定転針地点の200メートル手前の同灯台から077度330メートルに差し掛かったころ、同スタンドに寄り掛かったまま急に居眠りに陥った。
A受審人は、予定転針地点に達しても目が覚めず、転針することができないまま直進し、02時43分松嶋丸は、北防波堤灯台から175度640メートルの網走港南防波堤の外側に据え付けられた消波ブロックに、原針路、原速力のまま衝突した。
当時、天候は曇で風力2の南西風が吹き、潮候は低潮時であった。
衝突の結果、船首外板に亀(き)裂を伴う凹損及び球状船首に凹損を生じたが、のち修理された。

(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、漁場から北海道網走港に向けて航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、予定した転針が行われず、同港南防波堤に向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、船橋当直に就いて網走港に向けて航行する場合、前々日の同港発航以来ほとんど熟睡ができず、体調が十分でなかったのであるから、居眠り運航とならないよう、甲板員を1人呼んで見張りに立て、2人当直として居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかし、同人は、まさか居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠り運航となり、同港南防波堤に向首したまま進行して衝突を招き、船首外板に亀裂を伴う凹損及び球状船首に凹損を生じさせるに至った。






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION