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1998年(平成10年)

平成9年広審第73号
    件名
貨物船第22大盛丸防波堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年7月23日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

上野延之、杉?忠志、黒岩貢
    理事官
向山裕則

    受審人
A 職名:第22大盛丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:第22大盛丸甲板員 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
大盛丸…船首部船底外板に凹損、馬磯漁港南防波堤に損傷

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件防波堤衝突は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Bの五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年9月23日04時00分
瀬戸内海 愛媛県馬磯漁港
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第22大盛丸
総トン数 699トン
全長 73.83メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,471キロワット
3 事実の経過
第22大盛丸(以下「大盛丸」という。)は、専ら愛媛県越智郡上浦町下坂で採取した砂利を松山港第2区の松山市北吉田町の砂利置き場に輸送する砂利採取運搬船で、A及びB両受審人ほか5人が乗り組み、空倉で、船首2.2メートル船尾3.4メートルの喫水をもって平成8年9月23日03時30分北吉田町を発し、下坂に向かった。
A受審人は、船橋当直を一等航海士、次席一等航海士、B受審人及び自らによる4時間輪番制とし、出港操船に引き続き船橋当直に当たり、03時40分松山港吉田浜防波堤灯台を右舷正横に見て航過したころ、離岸作業を終えて昇橋してきたB受審人と船橋当直を交替することとしたが、同人が乗船履歴も長く船長経験もあったことから船橋当直中の注意について特に指示するまでもないと思い、眠気を催したら報告するよう指示することなく、同当直を同人に引き継いで降橋して休息した。
ところで、B受審人は、前日から上陸して出港当日の23日00時過ぎに帰船し、出港まで休息が十分にとれず睡眠不足の状態であった。
B受審人は、船橋当直を引き継いだのち、操舵輪後方の掛けいすに腰掛けて見張りに当たり、03時44分少し過ぎ松山港外港2号防波堤灯台(以下「2号灯台」という。)から217度(真方位、以下同じ。)1,200メートルの地点で、針路を005度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、折からの順潮流に乗じて14.4ノットの対地速力で進行した。
03時49分ごろB受審人は、2号灯台から337度1,300メートルの地点に達したとき、睡眠不足により眠気を催すようになったが、この程度なら我慢できると思い、居眠り運航の防止措置として、A受審人に報告して船橋当直を他の乗組員に替えてもらうことなく、いすに腰掛けて船橋当直を続けていつしか居眠りに陥り、同時53分少し前頭埼灯台から190度2.0海里の転針点を航過して馬磯漁港南防波堤に向首進行していたが、このことに気付かないまま続航中、大盛丸は、04時00分頭埼灯台から223度570メートルの地点の馬磯漁港南防波堤に原針路、原速力のままほぼ直角に衝突した。
当時、天候は晴で風力2の東風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、衝突地点付近には弱い北流があった。
A受審人は、衝突の衝撃で目を覚まして昇橋し、事後の措置に当たった。
衝突の結果、大盛丸は船首部船底外板に凹損を生じ、馬磯漁港南防波堤に損傷を与えたが、のちいずれも修理された。

(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、興居島東岸沖合を北上中、居眠り運航の防止措置が不十分で、馬磯漁港南防波堤に向首進行したことによって発生したものである。
大盛丸の運航が適切でなかったのは、船長が船橋当直者に対して眠気を催したときには報告するよう指示しなかったことと、船橋当直者が眠気を催した際、船長に報告しなかったこととによるものである。

(受審人の所為)
B受審人は、夜間、単独で船橋当直に当たり興居島東岸沖合を北上中、眠気を催した場合、居眠り運航にならないよう、居眠り運航の防止措置として、A受審人に報告して同当直を他の乗組員に替えてもらうべき注意義務があった。しかるに、B受審人は、この程度なら我慢できると思い、A受審人に報告して同当直を他の乗組員に替えてもらわなかった職務上の過失により、居眠り運航となり、馬磯漁港南防波堤に向首進行して同防波堤との衝突を招き、船首部船底外板に凹損並びに同防波堤に損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
A受審人は、夜間、松山港を出港後、B受審人に船橋当直を行わせる場合、眠気を催したときには報告するよう指示すべき注意義務があった。しかるに、A受審人は、B受審人が乗船履歴も長く船長経験もあったことから船橋当直中の注意について特に指示するまでもないと思い、眠気を催したときには報告するよう指示しなかった職務上の過失により、居眠り運航の防止措置がとられないまま進行して居眠り運航となり、馬磯漁港南防波堤に向首進行して同防波堤との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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