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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成9年5月12日17時15分 神奈川県鎌倉市由比ヶ浜沖合 2 船舶の要目 船種船名 プレジャーボート
プレジャーボート ゲン-エスティーエス-?
ジー.イー.エヌエスティーエックス 全長 3.10メートル
3.10メートル 登録長 2.66メートル
2.64メートル 機関の種類 電気点火機関
電気点火機関 出力 55キロワット 88キロワット 3 事実の経過 ゲン-エスティーエス-?(以下「STS号」という。)は、製造者型式がJT750Bの、通称JET.SKI.STSのFRP製水上オートバイで、A受審人が一人で乗り組み、水上レジャーの目的で、平成9年5月12日16時55分神奈川県鎌倉市材木座地先の、江ノ島灯台から086度(真方位、以下同じ。)6,700メートルの地点(以下「発航点」という。)を発し、稲村ヶ埼沖合に向けて航走を開始した。 A受審人は、海岸線近くにはウインドサーファーが多数出ていたので、同海岸線から1,200ないし1,300メートルまで沖出しし、数回の旋回を楽しんだあと、由比ヶ浜に向けて北上し、17時14分00秒発航点から256度1,295メートルの地点に達し、船首がほぼ000度を向いていたとき、半速力の時速約48キロメートル(25.9ノット)とし、緩やかに右旋回しながら進行したところ、同時14分23秒船首がほぼ020度を向いたとき、右舷船首55度450メートルばかりにジー.イー.エヌエスティーエックス(以下「STX号」という。)が自船の右舷正横方向から来航し、衝突のおそれがある状況で接近していたが、前方多数のウインドサーファーに気を奪われて周囲の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かなかった。 こうしてA受審人は、減速するなど衝突を避けるための措置をとらないまま右旋回を続けているうちSTX号の前路に進出する状況となり、17時14分55秒船首が053度を向いたとき、右舷船首20度30メートルばかりに同船を初めて認めたが、どうすることもできず、17時15分00秒発航点から291度950メートルの地点において、STS号は、053度を向いたその右舷船首が、STX号の左舷側中央部に、後方から38度の角度で衝突した。 当時、天候は晴で風はなく、潮候は上げ潮の中央期であった。 また、STX号は、製造者型式がJTT10Aの、通称JET.SKI.1100STXのFRP製水上オートバイで、B受審人が一人で乗り組み、友人一人を乗せ、水上レジャーの目的で、平成9年5月12日17時00分発航点を発し、稲村ヶ埼沖合に向けて航走を開始した。 B受審人は、友人を操舵に就け、自らはその後方に座って操舵の指揮に当たり、西方に向かったあと、稲村ヶ埼の北方海岸手前で折り返し、発航点に近づいたところで左旋回し、17時14分00秒同点から272度475メートルの地点に達し、針路をほぼ285度に定め、半速力の時速40キロメートル(21.6ノット)としたとき、左舷船首39度850メートルばかりに北上中のSTS号を認めた。 17時14分23秒B受審人は、STS号が方位がほとんど変らないまま450メートルに接近し、衝突のおそれを感じたので、同時14分33秒船首が285度を向いていたとき、ハンドルとスロットルを使って右舵一杯をとらせたところ、同時14分43秒船首が000度を向いたとき、左舷正横70メートルばかりにSTS号が接近したものの右旋回により衝突を避けられると思ったところ、同号が自船の前路に進出する状況となり、どうすることもできず、船首が015度を向いたとき、前示のとおり衝突した。 衝突の結果、STS号は、右舷船首部に亀(き)裂を、STX号は、左舷中央部に破口をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理され、両船とも乗員は海中に放り出され、救助されたものの、A受審人が、右膝挫傷創を負った。
(原因) 本件衝突は、由比ヶ浜沖合において、両船がレジャーの目的で航走中、STS号が、見張り不十分で、STX号の前路に進出したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、由比ヶ浜沖合において、水上オートバイを操縦する場合、他船と衝突のおそれを早期に発見できるよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、前方多数のウインドサーファーに気を奪われて周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、STX号の前路に進出して衝突を招き、STS号の右舷船首部に亀裂を、STX号の左舷中央部に破口をそれぞれ生じさせたほか、自らも負傷するに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。 B受審人の所為は、本件発生の原因とならない。
よって主文のとおり裁決する。
参考図
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