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1998年(平成10年)

平成9年横審第52号
    件名
遊漁船岡重丸防波堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年3月30日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

原清澄、川村和夫、西山烝一
    理事官
坂本公男

    受審人
A 職名::岡重丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船首部を圧壊、釣り客3人と乗組員1人とが頭部打撲及び同裂傷

    原因
船位確認不十分

    主文
本件防波堤衝突は、船位の確認が不十分で、那珂湊港の外東防波堤に向首進行したことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年6月11日00時50分
那珂湊港外東防波堤南端付近
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船岡重丸
総トン数 18.0トン
全長 21.45メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 467キロワット
3 事実の経過
岡重丸は、航行区域を限定近海区域とするFRP製の小型遊漁兼用船で、A受審人ほか同人の父と弟の2人が乗り組み、釣り客14人を乗せ、いか釣りの目的で、船首0.20メートル船尾1.70メートルの喫水をもって、平成8年6月10日18時00分那珂湊(なかみなと)港内の定係地を発し、同港東方沖合11海里ばかりの釣り場に向かった。
A受審人は、18時40分ごろ釣り場に至り、釣り客に釣りを行わせたところ、釣果が得られなかったので、徐々に釣り場を変えながら北上し、22時30分ごろ磯埼灯台から059度(真方位、以下同じ。)14.0海里の釣り場に至って少しばかりの釣果を得たところ、翌11日00時00分となったので、付近海域で操業する漁船とのいざこざを避けるための漁業協同組合との取り決めに従い、釣りをやめて定係地に帰航することとし、同地点において、針路を那珂湊港の外東防波堤南端にほぼ向首する233度に定め、機関を12.0ノットの半速力前進にかけ、椅子(いす)に腰を掛けて自動操舵により進行し、同時10分機関を22.0ノットの全速力前進に増速して続航した。
ところで、A受審人は、釣り場を発航するにあたり、法定灯火のほか、船橋上部に備えた船首端部を照らす200ワットの指向性のある作業灯などを点灯し、同灯火で前路の見張りを妨げる状況としたまま進行した。
A受審人は、00時40分磯埼灯台から108度1.7海里の地点に達し、那珂湊港の出入口付近に3.5海里の距離まで接近したとき、椅子から立ち上がって操舵を自動から手動に切り換え、しばらく続航したのち、レーダーでの周囲の監視をやめ、肉眼で周囲の状況を見ながら入航することにした。
00時45分少し過ぎA受審人は、磯埼灯台から175度1.7海里の地点に達し、1.5海里レンジとしたレーダーで外東防波堤を1.5海里ばかりに認める状況となったとき、右舷船首約3.5度方向に灯台の赤灯1個を視認し、そのころほぼ正船首方に那珂湊港外東防波堤灯台(以下「外東防波堤灯台」という。)の赤灯も視認できる状況にあったが、右隣の席に座った釣り客と話しをしていたほか、作業灯の灯火などで前路の見張りを妨げられ、同灯台の赤灯を見落としたまま、たまたま視認した右舷方の那珂湊港東防波堤灯台(以下「東防波堤灯台」という。)の赤灯を外東防波堤灯台の赤灯と思い込み、外東防波堤に向首していることに気付かず、いつもの針路を保って航行すれば、外東防波堤灯台を右舷側に見る態勢で入航できるものと思い、那珂湊港出入口付近に接近したとき、レーダーを使用するなどして同灯台と東防波堤灯台とを見間違えることのないよう、船位を確認することなく続航した。
A受審人は、00時48分外東防波堤灯台から052度1,050メートルの地点に達したとき、機関の操作レバーを下げて17.0ノットの速力まで減速したものの、依然として船位を確認しないまま進行中、同時50分那珂湊港の港域内を航行するため、更に速力を減じようとしたところ、同港の外東防波堤の東側で、その南端から4メートルのところに、原針路、原速力のまま衝突した。
当時、天候は雨で風力2の南東風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
衝突の結果、外東防波堤には損傷がなく、岡重丸の船首部を圧壊したが、のち修理され、釣り客3人と乗組員1人とが頭部打撲及び同裂傷などの負傷をした。

(原因)
本件防波堤衝突は、那珂湊港の定係地に向けて帰航中、同港出入口付近に接近する状況となった際、船位の確認が不十分で、外東防波堤に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、那珂湊港北東方沖合の釣り場から同港内の定係地に向けて帰航中、同港内の外東防波堤灯台を右舷側に見て入航する場合、同灯台の北方近距離に灯質が同じ紅色の東防波堤灯台が設置されていたのであるから、外東防波堤灯台と東防波堤灯台とを見間違えることのないよう、同港出入口付近に接近したとき、レーダーを使用するなどして船位を確認すべき注意義務あった。しかるに、同人は、たまたま右舷船首方に視認した東防波堤灯台の赤灯を外東防波堤灯台の赤灯と思い込み、外東防波堤に向首していることに気付かず、いつもの針路を保って航行すれば外東防波堤灯台を右舷側に見る態勢で入航できるものと思い、船位を確認しなかった職務上の過失により、外東防波堤に向首していることに気付かないまま進行して衝突を招き、右舷船首部を圧壊させ、釣り客3人と乗組員1人を負傷させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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