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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成8年12月21日15時30分 新潟県両津港 2 船舶の要目 船種船名
漁船あさひ丸 総トン数 19.99トン 登録長 17.02メートル 機関の種類
ディーゼル機関 漁船法馬力数 130 3 事実の経過 あさひ丸は、一本釣り(いか)漁業及び雑(かご)漁業に従事する木製漁船で、A受審人ほか4人が乗り組み、えびかご漁の目的で、船首0.5メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成8年12月21日01時新潟県両津港を発し、同県佐渡島北東方沖合約22海里の漁場に向かった。 A受審人は、漁場到着後前々日に仕掛けておいた、えびかごを引き揚げえび約150キログラムを漁獲し、13時30分両津漁港北防波堤灯台(以下「北防波堤灯台」という。)から045度(真方位、以下同じ。)22海里ばかりの地点を発進した。 漁場発進時、A受審人は、一人で船橋当直につき、針路を両津港の北防波堤と南防波堤とで形成された防波堤の入口付近に向く225度に定め、機関を11ノットの全速力前進とし、自動操舵で進行した。 ところで、両津港の北防波堤は、北防波堤灯台のある先端のところから299度の方向に延び、同先端から200メートルの地点で320度方向に屈曲して北側の海岸方に向かい、同地点から海岸までの防波堤外側には消波ブロックが設置されていた。 あさひ丸は、操舵スタンドの左前方近くにある切替えスイッチで、手動、自動及び遠隔のそれぞれに対応する位置にスイッチを移動させて操舵手段を選択できるようになっていた。また、A受審人は、港内の狭い水域等では、手動操舵を使用し、両津港の入港に際しては、通常、前示入口の東方にある防波堤(以下「沖防波堤」という。)の北西端と並行する地点から約100メートル東方のところで、同スイッチを自動から手動の位置に切り替え、その後港内に向け、大きく左方に転舵して航行することとしていた。 こうして、15時29分少し過ぎA受審人は、北防波堤灯台から003度280メートルに達し、切替えスイッチを手動の位置に切り替えることとなったが、既に切替えを済ませていると思い、同スイッチの位置の確認を適切に行うことなく続航した。 15時29分半A受審人は、沖防波堤の北西端と並行し、左舵をとったものの、切替えスイッチが自動操舵の位置のままであったところから舵効が得られないで直進し、前方の北防波堤に接近する状態となったので、操舵機の故障と考え、慌てて、機関を全速力後進としたが及ばず、あさひ丸は、15時30分北防波堤灯台から302度200メートルの屈曲地点において、ほぼ原針路、原速力でその船首部が、北防波堤消波ブロックのある部分に、後方からほぼ85度の角度で衝突した。 当時、天候は曇で風力2の北北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、視界は良好であった。 防波堤衝突の結果、船首と右舷側外板とに破口を生じて浸水したが、自力で航行して両津港内の修理地に向かい、のち修理された。
(原因) 本件防波堤衝突は、新潟県両津港において、漁場から同港内に向け航行中、操舵装置の切替えスイッチを手動の位置に切り替える際、同スイッチの位置確認が不適切で、舵効が得られないで直進し、前路の防波堤に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、新潟県両津港において、漁場から同港内に向け航行中、操舵装置の切替えスイッチを手動の位置に切り替える場合、確実に手動操舵により操船できるよう、同スイッチの位置の確認を適切に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、既に切替えを済ませていると思い、同スイッチの位置の確認を適切に行わなかった職務上の過失により、舵効が得られないで直進し、防波堤との衝突を招き、自船に船首及び右舷側外板の損傷を生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。 |