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1998年(平成10年)

平成9年函審第65号
    件名
遊漁船第八若潮丸漁船第三生長丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年3月5日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

大石義朗、大島栄一、平野浩三
    理事官
熊谷孝徳

    受審人
A 職名:第八若潮丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:第三生長丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
若潮丸…船首右舷側の外板に擦過傷
生長丸…右舷中央部のブルワーク上縁に亀裂、操舵室を損壊

    原因
若潮丸…見張り不十分、霧中信号不履行、狭視界時の航法(速力、レーダー)不遵守(主因)
生長丸…見張り不十分、霧中信号不履行、狭視界時の航法(速力、レーダー)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、第八若潮丸が、視界制限状態における運航が適切でなかったことによって発生したが、第三成長丸が、視界制限状態における運航が適切でなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年6月22日04時05分
北海道紋別港
2 船舶の要目
船種船名 遊魚船第八若潮丸 漁船第三生長丸
総トン数 4.97トン 3.76トン
登録長 10.99メートル 9.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
漁船法馬力数 50 60
3 事実の経過
第八若潮丸(以下「若潮丸」という。)は、FRP製小型遊漁兼用船で、A受審人が船長として乗り組み、客12人を乗せ、遊魚の目的で、船首0.3メートル船尾1.4メートルの喫水をもって、平成9年6月22日04時00分北海道紋別港第1船だまり北物揚場を発し、同港第3防波堤沖の釣り場に向かった。
紋別港は前日から霧模様で、A受審人は若潮丸の離岸のとき、約150メートルの視程と判断したが、霧中信号を行わず、レーダーを作動させ、手動操舵で第1船だまり内を約5ノットの速力で進行し、04時02分同船だまり出口の南堤の先端を替わって紋別港北副防波堤灯台(以下「北副防波堤灯台」という。)から286度(真方位、以下同じ。)740メートルの地点にきたとき右舷船首25度960メートルのところに入航中の第三生長丸(以下「生長丸」という。)が存在し、その後同船と著しく接近することを避けることができない状況になったが、レーダーを活用するなどの見張りが不十分で、同船との接近状況に気付かず、針路を保つことができる最小限度の速力に減じることも、必要に応じて行きあしを止めることもなく、約8ノットに増速し、同時03分同灯台から281度520メートルの地点において針路を112度とし、同時04分同灯台から272度280メートルの防波堤入口付近にさしかかったとき、霧が少し薄れて視程が約400メートルとなり、正船首280メートルのところに行きあしを停止した生長丸を視認し得る状況であったが、依然見張りを十分に行っていなかったので、これに気付かないまま衝突のおそれがある態勢で接近し、同時04分少し過ぎ速力を全速力の約10ノットは増速して続航中、同時05分わずか前船首至近に生長丸を認め、急ぎ左舵一杯としたが間に合わず、04時05分北副防波堤灯台から196度100メートルの地点において、原針路、全速力のままの若潮丸の船首が、生長丸の右舷側に前方から83度の角度で衝突した。
当時、天候は霧で風がほとんどなく、視程は約400メートルで、潮候は下げ潮の初期であった。
また、生長丸は、刺し網漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人ほか1人が乗り組み、操業の目的をもって、船首0.3メートル船尾1.2メートルの喫水で、同日03時00分紋別港第2船だまり西岸壁を発し、同港北東方の漁場に向かった。
B受審人は、出航時視界制限状態であったが、沖では霧が晴れるものと思い、漁場に向け航行中のところ、依然霧のため視界が制限されていたので操業を取り止め、反転して帰港の途に就き、03時53分ごろ北副防波堤灯台から042度0.8海里の地点において針路を216度に定めたが、有効な音響による霧中信号を行わず、機関を5.0ノットの全速力にかけて、レーダーのレンジを0.75海里とし、手動操舵として進行し、04時02分同灯台から078度260メートルの地点に達したとき、右舷船首64度960メートルのところに出航中の若潮丸が存在し、その後同船と著しく接近することを避けることができない状況となったが、レーダーを活用するなどの見張りが不十分で、同船との接近状況に気付かず、針路を保つことができる最小限度の速力に減じず、同時02分半少し前同灯台が200メートルになったとき、同灯台を付け回し始め、同時04分少し前船首が防波堤入口を向いたとき船首方280メートルのところに自船に向かって出航してくる若潮丸を視認し、直ちに機関のクラッチを切って行きあしを止め、船首が195度を向いたとき、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、若潮丸は船首右舷側の外板に擦過傷を生じ、生長丸は右舷中央部のブルワーク上縁に亀(き)裂を生じ、操舵室を損壊したが、のち修理された。

(原因)
本件衝突は、霧により視界が制限された北海道紋別港において、出航する若潮丸が、霧中信号を行わなかったうえ、安全な速力とせず、レーダーを活用するなどの見張りが不十分で、入航する生長丸と著しく接近することを避けることができない状況となった際、針路を保つことができる最小限度の速力に減じず、必要に応じて行きあしを止めなかったことによって発生したが、生長丸が有効な音響による霧中信号を行わなかったうえ、レーダーを活用するなどの見張りが不十分で、若潮丸と著しく接近することを避けることができない状況となった際、行きあしを止めるのが遅かったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
A受審人は、霧により視界が制限された北海道紋別港を出航する場合、入航する生長丸を見落とさないよう、レーダーを活用するなどの見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、入航する船がないものと思い、レーダーを活用するなどの見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、生長丸との衝突を招き、若潮丸の船首右舷側外板に擦過傷及び生長丸の右舷側中央部ブルワーク上縁に亀裂を生じさせ、操舵室を損壊させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、霧により視界が制限された北海道紋別港に入航する場合、出航する若潮丸を見落とさないよう、レーダーを活用するなどの見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、出航する船がないものと思い、レーダーを活用するなどの見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、若潮丸との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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