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1998年(平成10年)

平成9横審第27号
    件名
貨物船第七栄福丸漁船宗栄丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年1月20日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

雲林院信行、西山烝一、西田克史
    理事官
吉澤和彦

    受審人
A 職名:第七栄福丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:宗栄丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
宗栄丸…右舷外板に凹損を生じて衝突とほぼ同時に転覆、甲板員1人が胸部などを負傷

    原因
宗栄丸…動静監視不十分、追い越しの航法(避航動作)不遵守(主因)
栄福丸…警告信号不覆行、追い越しの航法(協力動作)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、第七栄福丸を追い越す宗栄丸が、動静監視不十分で、第七栄福丸の進路を避けなかったことによって発生したが、第七栄福丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Bを戒告する。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年11月14日16時17分
愛知県豊浜港南東方沖合
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第七栄福丸 漁船宗栄丸
総トン数 313トン 1.83トン
全長 62.10メートル
登録長 7.40メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 735キロワット
漁船法馬力数 20
3 事実の経過
第七栄福丸(以下「栄福丸」という。)は、船尾船橋型の貨物船で、A受審人ほか3人が乗り組み、空倉のまま、船首0.7メートル船尾3.0メートルの喫水をもって、平成8年11月14日13時50分名古屋港を発し、衣浦港に向かった。
A受審人は、発航時から1人で操舵操船にあたって知多半島西岸沿いに南下し、15時21分野間埼灯台から282度(真方位、以下同じ。)3.2海里の地点に達したとき、針路を120度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で手動操舵により進行し、16時13分半ごろ豊浜港沖合を航過したあたりで、左舷後方250メートルのところに沖へ向け南東進する宗栄丸を初めて視認した。
16時14分半A受審人は、宗栄丸の動静を監視していたところ、左舷正横後41度120メートルに近づいたのを認め、同船が衝突のおそれがある追い越しの態勢で接近する状況となったのを知った。その後、同受審人は、宗栄丸が避航しないまま間近に接近するのを認めたが、後方から接近する同船が避けてくれるものと思い、警告信号を行うことも、速やかに機関を操作して行きあしを止めるなど衝突を避けるための協力動作をとることもなく、同一の針路、速力で続航した。
16時17分少し前A受審人は、宗栄丸が左舷ほぼ正横至近のところに接近したとき、衝突の危険を感じ、汽笛により長音1回を吹鳴し、機関を極微速力前進としたが効なく、16時17分豊浜港南防波堤灯台(以下「南防波堤灯台」という。)から150度0.8海里の地点において、栄福丸は、原針路、ほぼ原速力のまま、その左舷船首部に宗栄丸の右舷船首部が後方から6度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
また、宗栄丸は、FRP製漁船で、B受審人が妻の甲板員Cと2人で乗り組み、えび流し網漁の目的で、船首尾とも0.3メートルの等喫水をもって、同日16時10分愛知県豊浜港を発し、同港南東方の野島付近の漁場に向かった。
発航後B受審人は、船尾で体をやや左舷側に向けて立ち、舵柄を右手に持って操舵にあたり、16時13分ごろ豊浜港南防波堤を替わったとき、右舷船首方400メートルのところに栄福丸を初めて視認したが、同船が前路を無難に替わる状況だったので、その後の動静監視を行わず、沿岸に設置されたのり網をつけ回しながら左転し、同時14分半南防波堤灯台から176度780メートルの地点に達したとき、針路を野島のやや南方に向く126度に定め、全速力前進より少し落とした11.0ノットの対地速力で進行した。
定針したときB受審人は、右舷船首43度120メートルのところの栄福丸に対し、追い越しの態勢で接近することを認め得る状況であったが、船首やや左前方遠くの針路目標の野島を見ることに気を取られ、同船に対する動静監硯を十分に行っていなかったので、同船と衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、同船を確実に追い越し、かつ、十分に遠ざかるまで、その進路を避けることなく続航した。
16時17分わずか前B受審人は、ふと沖側を見たとき右舷正横至近に栄福丸を認め、驚いて機関停止、続いて後進にかけたが及ばず、宗栄丸は、原針路、原速力のまま前示のとおり衝突した。
衝突の結果、栄福丸はほとんど損傷がなく、宗栄丸は右舷外板に凹損を生じて衝突とほぼ同時に転覆したが、船体は豊浜港に引きつけられたのち修理された。また、C甲板員が胸部などを負傷した。

(原因)
本件衝突は、愛知県豊浜港南東方沖合において、栄福丸を追い越す宗栄丸が、動静監視不十分で、栄福丸の進路を避けなかったことによって発生したが、栄福丸が警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
B受審人は、愛知県豊浜港南東方沖合を野島付近の漁場に向け航行中、前路を左方に無難に航過する栄福丸を視認し、その後自船を左転させた場合、栄福丸と追い越しの関係が生じることになるから、衝突のおそれがあるかどうか判断できるよう、同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、船首やや左前方遠くの針路目標の野島を見ることに気を取られ、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、栄福丸の進路を避けることなく進行して衝突を招き、宗栄丸の右舷外板に凹損、転覆及び甲板員に胸部負傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人は、愛知県豊兵港南東方沖合を衣浦港に向け航行中、左舷後方に宗栄丸を視認し、同船が衝突のおそれがある追い越しの態勢で間近に接近するのを認めた場合、速やかに機関を操作して行きあしを止めるなど衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、後方から接近する同船が避けてくれるものと思い、衝突を避けるための協力動作をとらなかった職務上の過失により、同じ針路、速力で進行して宗栄丸と衝突を招き、前示のとおり宗栄丸に損傷、転覆及び宗栄丸甲板員に負傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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