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1998年(平成10年)

平成9年函審第63号
    件名
漁船第五龍寶丸貨物船オーシャンロード衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年1月20日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

平野浩三、大島栄一、岸良彬
    理事官
千手末年

    受審人
A 職名:龍寶丸船長 海技免状:四級海技士(航海)(履歴限定)
    指定海難関係人

    損害
龍寶丸…船首部が圧壊
オ号…左舷中央部外板に破口を生じて5番左舷バラストタンクに浸水

    原因
龍寶丸…動静監視不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
オ号…動静監視不十分、警告信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、第五龍寶丸が、動静監視不十分で、前路を左方に横切るオーシャンロードの進路を避けなかったことによって発生したが、オーシャンロードが、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年4月2日03時45分
北海道襟裳岬南東沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船第五龍寶丸 貨物船オーシャンロード
総トン数 160トン 24,508トン
全長 33.48メートル 191.01メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
漁船法馬力数 640
3 事実の経過
第五龍寶丸(以下「龍寶丸」という。)は、沖合底引き網漁業に従事する船首船橋型鋼製漁船で、A受審人、B指定海難関係人ほか、16人が乗り組み、底引き網約10トン氷3トンを載せ、船首1.7メートル船尾4.0メートルの喫水をもって、平成9年4月1日23時30分北海道浦河港を発し襟裳岬南東沖合の漁場に向かった。
翌2日03時15分前夜から船橋当直に就いていたA受審人は、同漁場に到着して機関を中立運転としたまま漂泊を開始し、これまで魚群探索を行っていたB指定海難関係人に当直を委ねることにしたが、同人が豊富な当直経験を有することから特に指示しなくとも大丈夫と思い、厳重に見張りを行い、船舶の接近状況について報告するよう指示することなく、未明からの操業に備えて自室で就寝した。
03時20分襟裳岬灯台から123度(真方位、以下同じ。)21.5海里の地点において、単独当直中のB指定海難関係人は、これまで魚群の反応がなく操業開始までにさらに魚群探索を行うこととし、動力船が航行中に表示する法定灯火のほか、船体中央部マスト上の500ワット前照及び後照作業灯並びに船尾ギャロス上にも同様のものを点灯し、操舵室中央の操舵輪後方の回転椅子に腰掛けて針路を335度に定め、機関を12ノットの全速力前進にかけたとき、操舵輪左側のレーダーで右舷船首55度6.1海里に前路を左方に横切るオーシャンロード(以下「オ号」という。)のベクトル表示の映像を認め、見張りを専らレーダーに頼って回転椅子の左後方にある魚群探知機に見入って同船に対する動静監視を行わずに自動操舵により進行した。
03時37分少し過ぎオ号との距離が2海里となり白白紅の灯火を同方位に視認し得る状況であったが、B指定海難関係人は、オ号の方位変化を確かめないままそのベクトル表示が自船のものより大きかったことから前路を無難に替わって行くものと思い、オ号の接近状況についてA受審人に報告することなく、依然として魚群探索に気を取られ、衝突のおそれのある態勢であることに気付かず、オ号の進路を避けずに続航し、03時45分襟裳岬灯台から114度17.5海里の地点において、原針路、原速力のまま、龍寶丸の船首がオ号の左舷中央部に後方から75度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力3の西北西風が吹き、視界は良好であった。
また、オ号は、鋼製貨物船で、船長C、二等航海士Dほか19人が乗り組み、とうもろこしなど39,950トンを載せ、船首10.36メートル船尾11.30メートルの喫水をもって、同年3月17日アメリカ合衆国カラマ港を発し、熊本県八代港に向かった。
越えて4月2日03時20分D二等航海士は、襟裳岬灯台から106度22海里の地点において、甲板手1人を伴い、針路を260度に定め、機関を13ノットの全速力前進にかけ、自動操舵で進行した。
03時37分少し過ぎ左舷船首50度2海里に前路を右方に横切る龍寶丸の灯火を認め得る状況であったが、D二等航海士は、これを認めず、同時40分左舷船首50度1.2海里に同船の白緑の灯火を初めて認め、その後同船に対する動静監視を行っていなかったことから、衝突のおそれのある態勢に気付かず、警告信号を行わずにいたところ更に間近に迫ったが、衝突を避けるための協力動作をとることもなく、原針路、原速力のまま続航し、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、龍寶丸は船首部が圧壊し、オ号は左舷中央部外板に破口を生じて5番左舷バラストタンクが浸水し、のち龍寶丸は修理された。

(原因)
本件衝突は、夜間、襟裳岬南東沖合において、両船が互いに進路を横切り、衝突のおそれのある態勢で進行中、第五龍寶丸が、動静監視不十分で、前路を左方に横切るオーシャンロードの進路を避けなかったことによって発生したが、オーシャンロードが、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
第五龍寶丸の運航が適切でなかったのは、船長が無資格の当直者に対して、十分に見張りを行い、船舶の接近状況について報告するよう指示しなかったことと、当直者が接近する船舶についての状況を船長に報告しなかったこととによるものである。

(受審人等の所為)
A受審人は、襟裳岬南東沖合において、無資格の乗組員を単独で船橋当直に当たらせる場合、船舶の接近状況について報告するよう厳重に指示すべき注意義務があった。しかるに、同人は、当直者が経験豊富であるから指示を与えるまでもないと思い、船舶の接近状況について報告するよう厳重に指示しなかった職務上の過失により、船橋当直者が、認めた船舶の接近模様についてA受審人に報告することなく、レーダー映像のみで衝突のおそれがないものと判断して衝突を招き、第五龍審丸の船首部に圧壊を及びオーシャンロードの左舷中央部外板に破口をそれぞれ生じせしめ、オーシャンロードの5番左舷バラストタンクが浸水に至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B指定海難関係人が、接近する船舶を認めた際、その状況をA受審人に報告しなかったことは、本件発生の原因となる。
B指定海難関係人に対しては、勧告するまでもない。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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