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1998年(平成10年)

平成10年横審第24号
    件名
貨物船第二健光丸岸壁衝突事件〔簡易〕

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年6月19日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

猪俣貞稔
    理事官
関隆彰

    受審人
A 職名:第二健光丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
左舷船首部から同中央部外板にかけて凹損を伴う擦過傷

    原因
操船・操機取扱不適切

    主文
本件岸壁衝突は、着岸する際の操船が適切でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年5月28日21時04分
京浜港東京区
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第二健光丸
総トン数 428トン
全長 73.52メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 882キロワット
3 事実の経過
第二健光丸は、主としてコンテナ輸送に従事する船尾船橋型鋼製貨物船で、A受審人ほか4人が乗り組み、コンテナ38個約371トンを積載し、船首1.80メートル船尾3.80メートルの喫水をもって、平成95261300分北海道苫小牧港を発し、京浜港東京区に向かった。
翌々28日17時00分A受審人は、洲埼灯台の北方4海里の地点で、昇橋して操船の指揮に当たり、浦賀水道航路から中ノ瀬航路を経て、20時00分東京灯標の南方1海里の地点に達したところで、入港スタンバイを令して船首尾要員を配置に就け、同時10分東京西第1号灯浮標(以下、灯浮標については「東京西」を省略する。)を左舷側に航過したとき、機関を港内半速力前進の5.5ノットにかけて手動操舵により、品川ふ頭Dバースに向けて東京西航路を北上した。
ところで、品川ふ頭Dバースは、第15号灯浮標の北方850メートルばかりにあり、同ふ頭南端から350メートルばかりのところが予定船橋停止位置(以下「予定位置」という。)に当たっていた。
20時40分A受審人は、第15号灯浮標の手前1,200メートルの地点に達したとき、約4.8ノットの速力に減じ、同時49分半予定位置の手前600メートルのところで、針路を319度(真方位、以下同じ。)として同位置の100メートルばかり沖に向け、機関停止、微速力前進を繰り返しながら入り船左舷着けすることとして前進惰力で進行した。
21時00分A受審人は、船首がほぼ予定位置に達したところで、船首を岸壁線に対してほぼ45度の進入角度となる313度に向け、右舷錨投下を命じ、暫時錨鎖の延出速度で調節しながら行き脚を減殺するつもりでいたところ、錨鎖半節の約12メートル延出したあと延出不能となり、錨を引きずりながら岸壁に接近し、岸壁と舷側との間が約5メートルとなったところで船首スプリング索を岸壁ビットに取らせた。
A受審人は、船首スプリング索を効かし、機関と舵を使用して船尾を岸壁側に振り込み、船体を岸壁に平行させて接近することとしたが、スプリング索をとれば直ちに巻締めて張らせているものと思い、これを確認しないまま、スプリング索がたるんだ状態で機関を微速力前進にかけたため、前進行き脚が生じ、21時04分第15号灯浮標から330度900メートルの地点において、第二健光丸は、313度を向いたその左舷船首部が、岸壁線に対し、後方から45度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力3の南南西風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
衝突の結果、左舷船首部から同中央部外板にかけて凹損を伴う擦過傷を生じたが、修理は繰り延べされた。

(原因)
本件岸壁衝突は、京浜港東京区品川ふ頭において、岸壁線に対し、大角度で向針した状態で入り船左舷着けする際、スプリング索の緊張具合の確認が不十分で、前進行き脚を生じさせたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、京浜港東京区品川ふ頭において、入り船左舷着けするに当たり、岸壁線に対し、大角度で向針した状態から機関を使用し、スプリング索を効かして船体を岸壁線に平行に接近させる場合、機関操作する前に同索の緊張具合を確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、スプリング索をとれば直ちに巻締めて張らせているものと思い、前進機関をかける前に同索の緊張具合を確認しなかった職務上の過失により、大角度で向針した状態で行き脚が生じて岸壁と衝突し、左舷船首部から同中央部外板にかけて凹損を伴う擦過傷を生じさせるに至った。






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