|
(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成9年7月17日05時30分 北海道白神岬西方沖 2 船舶の要目 船種船名 押船第二十八豊照
起重機船ほうしょう 総トン数 146トン 全長 29.00メートル 61.25メートル 機関の種類 ディーゼル機関 出力
1,471キロワット 船種船名 漁船第56恵多丸 総トン数 19.63トン 全長
20.60メートル× 機関の種類 ディーゼル機関 出力 345キロワット 3 事実の経過 第二十八豊照は、鋼製の押船兼引船で、平成9年6月から起重機船ほうしょうとともにA株式会社に用船されて北海道松前郡大島の避難港築造工事に従事していたところ、消波ブロックの運搬と据え付け作業を行う目的で、A受審人ほか6人が乗り組み、工事監督員1人を乗せ、船首1.8メートル船尾3.6メートルの喫水をもって、消波ブロック960トンを載せ、喫水が船首2.2メートル船尾3.8メートルとなったほうしょうを押航(以下「豊照押船列」という。)し、翌7月17日05時00分松前港を発航して大島に向かった。 05時07分半A受審人は、松前灯台から188度(真方位、以下同じ。)1,600メートルの地点で、レーダーを見て針路を大島に向首する282度に定め、機関を全速力前進にかけて8.5ノットの対地速力とし、単独で船橋当直に就いて自動操舵により進行して間もなく、同時10分左舷船首33度4.6海里のところに前路を右方に横切る態勢の第56恵多丸(似下「恵多丸」という。)を初認した。 05時21分A受審人は、松前灯台から256度2.1海里の地点に達したとき、恵多丸を初認時と同方位のまま2海里のところに視認できる状況にあり、その後衝突のおそれのある態勢で接近したが、同船を初認したとき、同船は操業を終えて松前港へ帰航するいか釣り漁船で、左舷側に替わるものと思い、操舵室左舷寄り後部の椅子に腰掛けながら当直を行い、初認後同船の動静を監視していなかったので、そのことに気付かなかった。 A受審人は、恵多丸が本船の進行を避けずに接近を続けたが、依然同船の動静を監視していなかったので、警告信号を行うことも、更に間近に接近したものの、衝突を避けるための協力動作をとることもできずに続航中、05時30分松前灯台から267度3.2海里の地点において、原針路、原速力のままのほうしょうの左舷船首部に、恵多丸の船首が前方から69度の角度で衝突した。 当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、視界は良好であった。 また、恵多丸は、専らいか釣り漁船に従事する鋼製漁船で、B受審人ほか2人が乗り組み、いか一本釣りによる操業の目的で、船首0.8メートル船尾2.3メートルの喫水をもって、同月16日15時00分松前郡館浜漁港を発航し、小島の南西方の漁場に至って操業を行い、真いか約700キログラムを漁獲したところで操業を終え、翌17日04時00分松前灯台から224度14.0海里の地点を発進して帰航の途についた。 B受審人は、発進と同時に針路を館浜漁港に直航する033度に定め、機関を全速力前進にかけて8.0ノットの対地速力とし、単独で船橋当直に就いて自動操舵によって進行した。 05時12分B受審人は、松前灯台から245度5.0海里の地点に達したとき、右航船首36度4.1海里のところに前路を左方に横切る態勢の豊照押船列を初認したが、陸岸に沿って北上する船舶で本船の右舷側を替わるものと思い、初認して間もなく、操舵室に留まって見張りに専念することなく操舵室後方の自室に赴き、荷物の整理を始めた。 05時21分B受審人は、豊照押船列を同方位のまま2海里のところに視認できる状況にあり、その後衝突のおそれのある態勢で接近していたが、依然操舵室を無人としていたので、そのことに気付かず、同船の進路を避けることができないまま続航し、同時30分わずか前入港準備をしようとして自室から出て操舵室に戻ったところ、目前に迫った同船を認め、急いでクラッチを切ったが、時すでに遅く、原針路、原速力のまま前記のとおり衝突した。 衝突の結果、ほうしょうの左舷船首部に凹損を生じ、恵多丸は船首部を圧壊したが、のちいずれも修理された。
(原因) 本件衝突は、北海道白神岬西方沖において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれのある態勢で接近中、恵多丸が、船橋を無人とし、前路を左方に横切る豊照押船列の進路を避けなかったことによって発生したが、豊照押船列が、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為) B受審人は、単独で船橋当直に就いて航行中、右舷前方に前路を左方に横切る態勢の豊照押船列を認めた場合、見張りに専念できるよう、船橋を無人としないようにすべき注意義務があった。しかし、同人は、同船は陸岸に沿って北上する船舶で本船の右舷側に替わるものと思い、船橋を無人とした職務上の過失により、豊照押船列と衝突のおそれのある態勢で接近していたことに気付かず、その進路を避けることができないまま進行しで衝突を招き、ほうしょうの左舷船首部に凹損を生じ、恵多丸の船首部を圧壊させるに至った。 A受審人は、単独で船橋当直に就いて航行中、左舷前方に前路を右方に横切る態勢の恵多丸を認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、その動静を監視すべき注意義務があった。しかし、同人は、同船は操業を終えて松前港へ帰航するいか釣り漁船で、左舷側に替わるものと思い、その動静を監視しなかった職務上の過失により、同船が衝突のおそれのある態勢のまま本船の進路を避けずに接近していることに気付かず、警告信号を行うことも、衝突を避けるための協力動作をとることもできないまま進行して衝突を招き、両船に前記の損傷を生じさせるに至った。
参考図
|