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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成6年4月18日01時48分 沖縄島東方沖合 2 船舶の要目 船種船名 漁船尚生丸
油送船ベラナク 総トン数 8.5トン
49,612トン 全長 257.49メートル 登録長 1,190メートル 機関の種類
ディーゼル機関 蒸気タービン機関 出力 183キロワット
15,300キロワット 3 事実の経過 尚生丸は、まぐろはえ縄漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首0.60メートル船尾1.10メートルの喫水をもって、平成6年4月14日12時00分沖縄県泊漁港を発し、漁場に向かった。 A受審人は、翌15日00時沖縄島東方50海里ばかりの漁場に至り、06時まで休息したのち、投縄を開始した。 ところで、A受審人は、操業するに当たって、2ないし3時間をかけて投縄を行い、当日の15時ごろまで待機してから揚縄を開始し、夜半に終了したのち朝まで休息するという1日1回の操業を1週間ばかり行っていた。 越えて18日01時38分A受審人は、北緯26度25.4分東経129度5.9分の地点で3回目の揚縄を終えたところで、潮上りをすることとして正規の灯火を点灯し、2人の乗組員を休息させ、自らが操船に当たり、針路を175度(真方位、以下同じ。)に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、7.5ノットの対地速力で進行した。 01時39分A受審人は、左舷正横後11度1.9海里にベラナク(以下「ベ号」という。)の白、白、緑3灯を視認でき、その後同船が前路を右方に横切り、衝突のおそれのある態勢で接近するのを認め得る状況にあった。ところが、同受審人は、初めてこの漁場にきて僚船と数海里の間隔をとって操業を続けていたところ、この3日間僚船以外の船舶に会わず、航行を開始して前方をいちべつしたとき他船を認めなかったことから、航行船舶はいないものと思い、十分な見張りを行わなかったので、ベ号に気付かず、間もなく操舵室で室内灯を点灯し、海水でぬれた作業衣の着替えをしながら南下した。 01時45分A受審人は、ベ号が避航の気配がないまま同方位1,200メートルに接近したが、作業衣の着替えを続けていたので、依然としてこのことに気付かず、警告信号を行うことも、その後更に接近しても衝突を避けるための協力動作もとらずに続航中、尚生丸は、01時48分北緯26度24.2分東経129度6.0分の地点において、原針路、原速力のまま、その左舷船首がベ号の右舷後部に後方から51度の角度で衝突した。 当時、天候は曇で風力3の南東風が吹き、海上には小さな波浪があった。 A受審人は、作業衣の着替えを終えたとき強い衝撃を受けて、ベ号との衝突を知った。 また、ベ号は、液化天然ガスを輸送する船尾船橋型油送船で、船長B及び二等航海士Cほか36人が乗り組み、船首尾とも8.45メートルの喫水をもって、同月16日07時45分大阪港堺泉北区を発し、ブルネイ・ダルサラーム国ルマット港に向かった。 翌々18日00時C二等航海士は、北緯26度42.2分東経129度28.2分の地点で、操舵手とともに船橋当直を引き継ぎ、針路を226度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、15.1ノットの対地速力で進行した。 01時39分C二等航海士は、北緯26度25.9分東経129度7.9分の地点に達したとき、右舷船首28度1.9海里のところに南下する尚生丸の白、紅2灯を視認できる状況にあり、その後同船が前路を左方に横切り、衝突のおそれのある態勢で接近していたが、十分な見張りを行わなかったので、このことに気付かず、尚生丸の進路を避けないで続航し、同時48分少し前右舷至近に同船の灯火を初めて認め、左舵をとったが及ばず、ベ号は、原針路、原速力のまま、前示のとおり衝突した。 衝突の結果、尚生丸は、左舷船首を圧壊したが、のち修理され、ベ号は、右舷船尾外板に擦過傷を生じた。
(原因) 本件衝突は、夜間、沖縄島東方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれのある態勢で接近中、ベ号が、見張り不十分で、前路を左方に横切る尚生丸の進路を避けなかったことによって発生したが、尚生丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為) A受審人は、夜間、沖縄島東方沖合において、まぐろはえ縄漁を操業中、潮上りのため航行を開始した場合、他船を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに同人は操業を開始してから僚船以外の船舶に会わず、船首方をいちべつしたとき他船を認めなかったことから、航行船舶はいないものと思い、作業衣の着替えをしていて、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、ベ号に気付かず、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらないまま進行して同船との衝突を招き、自船の船首を圧壊させるとともにベ号の船尾外版に擦過傷生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては海難審判法第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。
(参考)原審裁決主文平成8年5月23日那審言渡(原文縦書き) 本件衝突は、尚生丸が見張り不十分で、接近するベラナクとの衝突を避けるための措置をとらなかったことと、ベラナクが、動静監視不十分で、前路で揚げ縄を終えて走り出した尚生丸との衝突を避けるための措置をとらなかったこととに因って発生したものである。 受審人Aを戒告する。
参考図
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