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1998年(平成10年)

平成8年第二審第48号
    件名
巡視艇いよなみ漁業取締船いよかぜ衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年2月4日

    審判庁区分
高等海難審判庁
原審広島

師岡洋一、須貝壽榮、松井武、小西二夫、田邉行夫
    理事官
金城隆支

    受審人
A 職名:いよなみ船長 海技免状:二級海技士(航海)
B 職名:いよなみ主任航海士 海技免状:三級海技士(航海)(履歴限定)
C 職名:いよかぜ船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
いよなみ…船首部外板、船底外板、プロペラ及びプロペラ軸をそれぞれ損傷
いよかぜ…船体沈没して全損、乗組員5人が打撲傷等

    原因
いよなみ…見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(主因)
いよかぜ…動静監視不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    二審請求者
受審人C

    主文
本件衝突はいよなみが、レーダーなどによる見張り不十分で、船首方から接近するいよかぜとの衝突を避けるための措置をとらなかったことによって発生したが、いよかぜが、レーダーによる動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとるのが遅れたことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
受審人Cを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年2月19日23時20分
安芸灘梶取ノ鼻西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 巡視艇いよなみ 漁業取締船いよかぜ
総トン数 113トン 29トン
登録長 34.50メートル 20.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 3,030キロワット 1,470キロワット
3 いよなみ及びいよかぜ
いよなみは、愛媛県今治港を基地として今治海上保安部長の行動指令に基づき、主に来島海峡付近の哨戒(しょうかい)及び密漁の取締りに従事する鋼製巡視艇で、機関の遠隔操縦が操舵室で行われ、全速力前進27.21ノットにおける最短停止時間が26秒、同距離が207メートル、同速力における右舵35度での回頭角度30度及び90度の所要時間がそれぞれ10秒及び22秒の性能を有していた。
いよなみは、航海計器としてジャイロコンパス、航海用レーダー(以下「レーダー」という。)、電磁ログ、GPS受信機及びレーダー情報を独立して表示できる警備救難情報表示装置(以下「情報表示装置」という。)等を、また船外との通信手段としてSSB送受信機、国際VHF及び船舶電話等をそれぞれ設備し、肉眼による見張り器具として10倍双眼鏡1個及び7倍双眼鏡5個のほか、夜間用微視光レンズと交換すると暗夜でも物体を約1海里の距離から識別できる性能を持つ、10倍のジャイロ組込像静止双眼鏡(以下「高性能双眼鏡」という。)1個を備えていた。
いよなみの航海灯など各灯の点消灯は、通常、操舵室右舷側天井に設置されている灯火管制制御盤の主電源スイッチ及び各灯スイッチの操作で行われるが、漁業関係法令違反操業(以下「漁業違反」という。)の取締りを行うときには、所定の航海灯を消化したうえ、照明が船外に漏れないように灯火管制を行って無灯火状態で航行することがあり、必要に応じて即座に点消灯ができるように、主電源スイッチの操作だけで行っていた。
一方、いよかぜは、愛媛県水産局水産課長の行動指令に基づき、主に安芸灘を含む燧灘(ひうちなだ)海域における、同県漁業調整規則違反の取締りに従事する軽合金製の漁業取締船で、機関の遠隔操縦が操舵室で行われ、全速力前進31.79ノットにおける最短停止時間が15秒、同距離が70メートル、同速力における右舵35度での回頭角度45度及び90度の所要時間がそれぞれ13秒及び26秒の性能を有していた。
いよかぜは、航海計器としてジャイロコンパス、レーダー、レーダー情報を独立して表示できるレーダーディスプレー、電磁ログ、GPS受信機及び同プロッタ等を、船外との通信手段として国際VHF、船舶電話及び漁業無線送受信機等をそれぞれ設備し、肉眼による見張り器具として8倍双眼鏡6個を備えていた。
いよかぜの航海灯など各灯の点消灯は、通常、操舵室右舷側前部の機関繰縦台の後端面に設置されている、分電箱の主電源スイッチ及び各灯スイッチの操作で行われるが、漁業違反の取締りを行うときには、所定の航海灯を消灯したうえ、照明が船外に漏れないように灯火管制を行って無灯火状態で航行することがあり、必要に応じて即座に点消灯ができるように、主電源スイッチの操作だけで行っていた。
4 漁業違反の実態及び取締りの状況
愛媛県は、漁業法等によって、同県漁業調整規則に禁止漁業の種類、使用禁止漁具、禁止漁法、漁業種類ごとの禁止区域及び夜間の禁止漁業などを詳細に定めており、これに基づいて、いよなみのほかの巡視艇及びいよかぜほかの漁業取締船が取締りに当たっていた。また、同県は月ごとの行動日を示す、漁業取締船行動計画表を今治海上保安部に提出しており、一方、今治海上保安部から漁業取締りの行動計画表を入手していなかったが、巡視艇が適宜出動していることは承知していた。
燧灘における漁業違反は、小型底びき網漁業及び一艘(そう)ローラーごち網漁業に多く、違反内容が使用禁止漁具違反、操業期間違反及び無許可操業などで、今治海上保安部配属の巡視艇及び愛媛県の漁業取締船が検挙した漁業違反件数は漸増傾向にあり、その取締り要請が、関係漁業協同組合、漁業種類ごとの組合及び個人から同保安部や同県に対してなされていた。
巡視艇及び漁業取締船は、漁業違反が刑事事件として検察庁に送致されるとともに、愛媛県による行政処分の対象となることから、検挙に当たっては現行犯の証拠を保全することが必要であるのに対し、漁業違反船が巡視船や漁業取締船の接近を察知すると使用漁具を放棄するなどして証拠の隠滅を図ることから、採証に困難を来すことが多く、夜間の取締りに当たっては所定の航海灯を消灯して接近する必要があり、無灯火状態で航行することが多かった。
5 本件発生に至る経緯
いよなみは、A受審人及びB受審人ほか10人が乗り組み、来島海峡及びその付近海域における漁業違反等の取締りのため、愛媛県が前もって提出していた漁業取締船行動計画表を確認しないまま、船首1.3メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、平成8年2月19日09時30分今治港を発し、来島海峡航路の巡視を行ったのち、10時30分津島北側に設置してある係船浮標に係留し、同島北側海域の通航船及び操業漁船の監視に当たり、夜間の巡視航行に備えた。
A受審人は、同日21時係船浮標を発し、適宜、航海灯の点消灯を行って通航船の航行指導と漁業違反の取締りを行いながら、伯方島を反時計回りに一周の後、大三島南西端沖から来島海峡航路中水道を経由し、周航路東口から平市島方向に向かい、同島の南方約2海里の地点で小部湾に向かうこととして反転した。
22時54分A受審人は、小島と来島間の来島ノ瀬戸付近で航海灯を消灯して無灯火状態とし、自らは操舵室右舷前側の窓際に設置してあるジャイロレピーターの後方で操船指揮に当たり、手動操舵に航海士補を、右舷側に設置してある情報表示装置の監視に他の航海士補を、後方に設置してあるレーダーの監視にB受審人を就かせた。更に左舷側に設置してある主機操縦ハンドルの操作と見張りに機関長を、同人の左舷側に見張員として機関士補1人をそれぞれ配置し、その他の乗組員6人を見張りと採証要員として操舵室後部に待機させ、機関を全速力前進にかけて約27ノットの速力で航行した。
その際、A受審人は、無灯火状態で航行しており、他船から視認が困難であるから、衝突のおそれを早期に回避することができるよう、自ら厳重な見張りを行う必要があったが、レーダー監視に専属の見張り当直員を当てているので大丈夫と思い、備え付けの高性能双眼鏡を有効に使用しなかった。
その後、A受審人は、桴磯(いかだいそ)の北方、梶取ノ鼻西方沖を通過し、23時10分ごろ小部湾に至り、同湾南西方の菊間港沖合周辺をレーダーで監視させたところ、船舶の映像を認めなかったので大下島沖に向かうこととし、同時16分来島梶取鼻灯台から222度(真方位、以下同じ。)2海里の地点において、針路を030度に定め、機関を全速力前進にかけ27.0ノットの対地速力で、無灯火状態のまま手動操舵によって進行した。
一方、B受審人は、船長を補佐してレーダー当直に当たり、3海里レンジとしたレーダーの監視を続けていたところ、定針の当初、いよかぜが右舷前方の梶取ノ鼻の周辺の山並に遮蔽(しゃへい)されていて、同船の映像を認めることができなかったものの、23時17分少し過ぎいよかぜが山並を外れたとき、同船の映像を右舷船首13度2.2海里に認めることができる状況となったが、接近する船舶はいないものと思い、レーダーによる見張りを十分に行っていなかったので、いよかぜの存在に気付かなかった。
こうして、A受審人は、23時19分来島梶取鼻灯台から246度1,270メートルの地点で040度に転針したとき、正船首1,450メートルのところに無灯火状態で、かつ、真向かいの態勢で接近するいよかぜの船体を認め得る状況となったが、見張りを部下に任せておいて大丈夫と思い、依然夜間用微視光レンズを取り付けた高性能双眼鏡をもって十分な見張りを行わなかったので、これに気付かなかった。また、B受審人からも、さらに、情報表示装置をもって来島海峡西口付近の航行違反船舶の監視を行っていた航海士補からも、何の報告も得られなかったこともあって、その後いよかぜが衝突のおそれがある態勢で接近することにも気付かず、相手船を正船首から少し外して衝突のおそれのない態勢としたうえで機関を停止するなど衝突を避けるための適切な措置をとらないで続航した。
23時19分55秒A受審人は、正船首70メートルにいよかぜの船影を肉眼で認め、機関停止を命じたが効なく、23時20分来島梶取鼻灯台から280度630メートルの地点において、いよなみは、原針路、原速力のまま、その船首が、いよかぜの左舷後部に前方から30度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力4の北東風が吹き、付近の潮流は微弱であり、月齢は0で視程は約10海里であった。
また、いよかぜは、C受審人ほか5人が乗り組み、漁業違反の取締りのため、船首0.7メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、同日14時57分松山港を発し、梶取ノ鼻西方沖から宮ノ窪瀬戸、魚島北部、川之江市沖を経由し、17時35分愛媛県新居浜港の新居浜海上保安署桟橋に係留して夜間の取締り航行に備えた。
C受審人は、21時26分ごろ係留地を発し、適宜、航海灯の点消灯を行い、約27ノットの速力で漁業違反の取締りを行いながら、伯方島東側、大三島北側、同島西側及び来島海峡東水道を経由し、竜神島南方で来島ノ瀬戸に向けて反転した。
23時09分ごろC受審人は、来島ノ瀬戸を通過したところで所定の航海灯を消灯して無灯火状態とし、その後、操舵室左舷寄りに設置された3海里レンジとしたレーダーの監視と操船指揮に当たり、手動操舵とレーダーディスプレーの監視に一等航海士を、右舷側の機関操縦台の後方で機関計器盤の監視に二等機関士を、同人の後方で見張りに機関長を、自らの後方で通過地点などの記録と見張りに一等機関士を、操舵室後部で無線機の聴守に甲板員をそれぞ配置し、桴磯灯標と大角鼻間の水道を通過した。
23時14分半C受審人は、来島梶取鼻灯台から061度2海里の地点において、針路を256度に定め、機関を全速力前進より少し減じ、27.0ノットの対地速力で進行した。
定針したころC受審人は、小部湾を行動するいよなみが左舷側の梶取ノ鼻周辺の山並に遮蔽されていたので、同船の映像を認めることができず、23時17分少し過ぎいよなみが山並を外れたとき、その映像を左舷船首33度2.2海里に認め得る状況となったが、これに気付かないまま続航した。
23時18分少し過ぎC受審人は、来島梶取鼻灯台から009度1,050メートルの地点に達したとき、針路を220度に転じ、同灯台沖を南下するうち、23時19分いよなみが自船の正船首1,450メートルのところで針路を転じたので、その後同船が衝突のおそれがある態勢で接近することになったが、依然これに気付かなかった。
23時19分19秒C受審人は、正船首0.5海里にレーダー映像を初めて認めたが、漁業違反船もしくはレーダー偽像であろうと思い、巡視艇が無灯火で漁業違反船の取締りに適宜出動していることに思い至らず、その後、同映像の方位変化と共に接近速度を監視するなどレーダーによる動静監視を十分に行わなかったので、いよなみが無灯火で急速に接近することに気付かず、相手船を正船首から少し外して衝突のおそれのない態勢としたうえで機関を停止するなど衝突を避けるための措置をとらないまま、双眼鏡をもって前方を見張りながら進行した。
23時19分36秒C受審人は、再びレーダーを見て、同映像が正船首0.25海里に接近したのを知ったが、航海灯を点灯しないで機関を中立とし、同時19分50秒約1ノットの惰力で航行中、いよなみの船影を認め、右舵一杯として機関を全速力前進にかけたが及ばず、いよかぜは、250度に向首したとき前示のとおり衝突した。
衝突の結果、いよなみは船首部外板、船底外板、プロペラ及びプロペラ軸をそれぞれ損傷したが、のち修理され、いよかぜは、間もなく来島梶取鼻灯台から292度700メートルばかりの地点に沈没して全損となり、いよかぜの乗組員5人が打撲傷等を負ったが、同船の乗組員6人全員がいよなみに収容された。

(原因に対する考察)
本件は、夜間、両船が、安芸灘を無灯火状態で航行中に発生した事件であるが、以下その原因について考察する。
海上衝突予防法は無灯火の航行を禁止しており、無灯火航行は同法違反ではある。しかしながら、両船に課せられた業務が漁業違反の取締りであり、検挙に当たっては現行犯の証拠を保全することが必要である点を考慮すると、本件発生の原因とすることは相当でない。
一方、漁業違反の取締りとはいえ、無灯火状態で航行する場合は、他船から視認が困難であるから、所定の航海灯を表示した状態での航行に比べ、特に厳重な見張りが必要であり、接近する他船があれば自ら避航する義務があることは言うまでもない。
ところで、いよなみは、高性能双眼鏡を備えており、その性能を考慮した適切な使用がなされておれば、いよかぜを約1海里の距離で発見できたと認められる。しかるに、同船が、衝突の1分前、両船間の距離1,450メートルで、衝突のおそれのある状況が発生した時点から本件発生直前まで、いよかぜを視認しなかったことは、同双眼鏡を使用した見張りが十分であったとは言えない。また、衝突の約3分前からいよかぜの映像を探知できたと認められるところ、衝突のおそれの発生から衝突に至るまでの間、同映像を認めなかったことは、レーダー見張りが十分であったとは言えず、いずれも原因となる。
なお、独立してレーダー情報の表示ができた情報表示装置によっても、いよかぜの映像を認めることができなかったことは、同装置が主として警備及び救難に使用されるもので、単に船舶等を発見することのみに使用されるものでないことに鑑み、原因と認めない。
一方、いよかぜ側においても、本件発生の約3分前からいよなみの映像を探知できたと認められるところ、衝突の1分前衝突のおそれが生じた時点で、同船の映像を発見できなかったことは、見張りが十分に実施されていたとは言い難い。しかしながら、衝突の41秒前に同映像を認めた後、その方位変化と接近速度を調べるなど動静を十分に監視しておれば、同映像は低速力の漁業違反船のものや偽像でなく、自船に急速に接近する高速船のものであることが容易に判断できたのであり、衝突回避のための適切な措置をとり得たから、発見が遅れたことは強いて原因とは認めないものの、同船の動静監視が十分でなかったことは原因となる。
また、いよかぜは、衝突時に船体がほぼ停止状態に近くなっていた事実を同船の運動特性から認定できるが、いよなみと同様に無灯火状態で漁業違反の取締業務に従事中であって、接近する船舶に対する積極的避航義務がいよなみと対等に課せられていたこと、探知した映像が漁業違反船もしくはレーダー偽像であろうと思っていて避航動作をとる措置が遅れたこと及び巡視艇が無灯火で漁業違反船の取締りに適宜出動していることを知っていたことを勘案すると、探知したいよなみの映像に対する動静監視が十分でなかったことの本件発生へのかかわりは、いよなみの見張りが十分でなかったことに比し、決して軽いものではないと認められる。
なお、操舵のための補助装置であるレーダーディスプレーをもって、いよなみの映像を認めることができなかったことは、原因と認めない。

(原因)
本件衝突は、夜間、安芸灘梶取ノ鼻西方沖合において、いよなみ及びいよかぜの両船が、いずれも無灯火状態で漁業違反の取締りに従事中、北上するいよなみが、レーダーなどによる見張り不十分で、船首方から接近するいよかぜとの衝突を避けるための措置をとらなかったことによって発生したが、南下するいよかぜが、レーダーによる動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとることが遅れたことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、安芸灘梶取ノ鼻西方沖合において、無灯火状態で漁業違反の取締りに従事する場合、無灯火状態で接近する船舶を見落とさないよう、高性能双眼鏡を使用した十分な見張りを行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、見張りを部下に任せておいて大丈夫と思い、十分な見張りを行わなかった職務上の過失により、衝突を避けるための措置をとることなく進行していよかぜとの衝突を招き、いよなみの船首部外板、プロペラ及びプロペラ軸等に損傷を生じ、いよかぜを沈没させ、同船乗組員5人に打撲傷等を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、夜間、安芸灘梶取ノ鼻西方沖合において、無灯火状態で漁業違反の取締りに従事中、船長を補佐してレーダー監視に当たる場合、無灯火状態で接近する船舶の映像を見落とさないよう、レーダーによる見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、接近する船舶はないものと思い、レーダーによる見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、いよかぜとの衝突を招き、前示のとおり両船に損害を生じさせ、いよかぜの乗組員に打撲傷等を負わせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
C受審人は、夜間、安芸灘梶取ノ鼻西方沖合において、無灯火状態で漁業違反の取締りに従事中、正船首方向0.5海里に無灯火の船舶のレーダー映像を認めた場合、その方位変化と共に接近速度を調べるなどレーダーによる動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、漁業違反船もしくはレーダー偽像であろうと思い、レーダーによる動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、衝突を避けるための措置をとることが遅れていよなみとの衝突を招き、前示のとおり両船に損害を生じさせ、自らと自船の乗組員に打撲傷等を負わせるに至った。
以上のC受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

(参考)原審裁決主文平成8年12月9日広審言渡(原文縦書き)
本件衝突は、無灯火状態で漁業関係法令違反操業取締中のいよなみが、レーダーなどによる見張り不十分で、正船首方から接近するいよかぜとの衝突を避けるための措置をとらなかったこと及び無灯火状態で漁業関係法令違反操業取締中のいよかぜが、レーダーによる見張り不十分で、正船首方から接近するいよなみとの衝突を避けるための措置をとらなかったことに因って発生したものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Cを戒告する。

参考図






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