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1998年(平成10年)

平成9年横審第83号
    件名
プレジャーボート恵洋丸のり養殖施設損傷事件〔簡易〕

    事件区分
施設等損傷事件
    言渡年月日
平成10年2月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

大本直宏
    理事官
甲斐賢一郎

    受審人
A 職名:恵洋丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
のり網及び同取付け属具などに損傷

    原因
水路調査不十分

    主文
本件のり養殖施設損傷は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年12月15日09時00分
東京湾木更津港沖
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート恵洋丸
総トン数 19トン
全長 11.56メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 470キロワット
3 事実の経過
恵洋丸は、2基2軸のFRP製プレジャーボートで、A受審人が乗り組み、友人2人を乗せ、船首1.2メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成8年12月15日08時15分京浜港横浜区鳥浜にある横浜ベイサイドマリーナを発し、釣りの目的で、千葉県木更津港沖に向かった。
A受審人は、発航時から1人で操船にあたり、08時45分木更津港防波堤西灯台から302度(真方位、以下同じ。)2,800メートルの地点に達したとき、北よりの風波が強まってきたので、釣り場を第1海堡の南側に変更することとし、針路を217度に定め、機関を18ノットの巡航速力にかけ、手動操舵で進行した。
ところで、富津航路南口の西南西方で、富津岬北方の海域には、海図1062号に「のりひび多数あり」と注意書きがあってA受審人は同海図を保有しており、毎年8月20日から翌年5月20日までの期間、横45メートル縦120メートルの長方形を1セットとした80セット余りの、のり養殖施設が、5辺をなして整然と配列され、各辺には約200メートル間隔で灯火付黄色標識(以下「黄色ブイ」という。)が設置されていた。
A受審人は、第1海堡西端付近に向首して続航したが、前方にのり養殖施設はないものと思い、同施設が設置されている海域に向かっていることが判断できるよう、海図にあたるなどして、水路調査を十分に行うことなく、同施設に向かっていることに気付かないまま進行した。
こうして、A受審人は、09時少し前前方近くに黄色ブイを初認して速力を5ノットに減速し、同ブイの周りを見回したところ、同ブイの近くに数個の黄色ブイを認めたが、各黄色ブイの間は通航できるものと考えて続航中、09時00分富津岬先端の明治百年記念展望台から350度2,200メートルばかりの地点で、原針路原速力のまま、のり養殖施設に乗り入れた。
当時、天候は曇で風力4の北風が吹き、潮候は下げ潮の初期で、視界は良好であった。
A受審人は、のり養殖施設に乗り入れた直後、プロペラが同施設の網索にからまったのを知り、直ちに機関を中立として事後の措置にあたった。
その結果、恵洋丸に損傷はなかったが、のり網及び同取付け属具などに損傷を生じた。

(原因)
本件のり養殖施設損傷は、東京湾において釣り場に向け進行する際、水路調査が不十分で、富津岬北方に設置された同施設に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、東京湾において釣り場に向け進行する場合、のり養殖施設が設置されている海域に向かっていることが判断できるよう、海図にあたるなどして、水路調査を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、前方に同施設はないものと思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、原針路原速力のまま進行し、同施設への乗入れを招き、のり網及び同取付け属具などに損傷を生じさせるに至った。






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