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(事実) 1 本件発生の年月日時刻及び場所 平成8年7月2日17時10分 青森県三沢漁港北北東方沖合 2 船舶の要目 船種船名
漁船第十八美代丸 総トン数 16.64トン 登録長 14.86メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 404キロワット 3 事実の経過 第十八美代丸は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が妻及び息子との3人で乗り組み、操業の目的で、船首0.80メートル船尾1.60メートルの喫水をもって、平成8年7月2日04時00分青森県三沢漁港を発し、同県上北郡六ヶ所村東方沖合で同港の北方21海里付近の漁場に向かった。 ところで、三沢漁港の北側10海里ばかりの間で海岸から2海里ばかりの海域には4ヶ統の小形定置網があり、これらのうちの1ヶ統が三沢港内東防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から358度(真方位、以下同じ。)3.3海里、013度3.8海里、016度3.3海里及び001度3.0海里の各地点を順次結ぶ線によって囲まれた区域に2号定置と称して設置されていた。A受審人は、14年ばかり前から毎年6月から12月までの間、同港を基地として操業していたことから、これら定置網の存在を知っており、GPSプロッターにそれぞれの位置を表示するよう入力してこれを避けるよう針路を定めていた。 漁場に着いたA受審人は、操業していか約3トンを漁獲したのち、15時30分白糠灯台から165度6海里の地点を発進し、針路をGPSプロッターで計測させた175度とし、機関を10.3ノットの半速力前進にかけ、同港に向け帰途に就いた。 発進後単独で船橋当直に当たったA受審人は、GPSプロッターに表示させた針路線上にいることを確認しながら自動操舵で進行し、16時30分陸奥塩釜灯台から032度4.3海里の地点に達したころ、霧で視界が制限される状況となり、2人の乗組員が行っていた前部甲板での、いかの箱詰め作業が遅れ気味であったことから、自らも同作業に従事することとして船橋を離れた。 A受審人は、このころから風潮流の影響を受け始め、右方に3度圧流され、178度の進路、11.4ノットの対地速力となって進行し、その後時々船橋に戻って周囲の見張りを行って続航した。 17時00分A受審人は、防波堤灯台から007度5.5海里に達したとき、2号定置が右舷船首3度1.9海里に接近していたが、船橋を離れるまでは風潮流の影響を認めなかったことから、圧流などで定置網に接近することはないと思い、レーダーなどによる船位の確認を十分に行うことなく、これに気付かず進行中、第十八美代丸は、17時10分防波堤灯台から011度3.6海里の地点において、2号定置に原針路、原速力のまま乗り入れた。 当時、天候は霧で風力2の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の初期で、視程は500メートルばかりであった。 その結果、本船にはほとんど損傷を生じなかったが、2号定置は胴網などに損傷を生じ、のち修理された。
(原因) 本件定置網損傷は、漁場から青森県三沢漁港に向け南下中、船位の確認が不十分で、三沢漁港北側水域の定置網に向かって進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、視界が制限された状態で、甲板上のいかの箱詰め作業に従事し、時々船橋に戻って周囲の見張りを行いながら、青森県三沢漁港に向け南下する場合、圧流などで定置網に接近しているかどうかを知ることができるよう、レーダーなどによる船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、船橋を離れるまでは風潮流の影響を認めなかったことから、圧流などで定置網に接近することはないと思い、レーダーなどによる十分な船位の確認を怠った職務上の過失により、圧流されて定置網に接近していることに気付かず進行して定置網損傷を招き、胴網などを損傷させるに至った。 |