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1998年(平成10年)

平成10年横審第58号
    件名
油送船日伸丸機関損傷事件〔簡易〕

    事件区分
機関損傷事件
    言渡年月日
平成10年12月1日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

川原田豊
    理事官
相田尚武

    受審人
A 職名:日伸丸機関長 海技免状:ニ級海技士(機関)
    指定海難関係人

    損害
過給機損傷

    原因
主機過給機の整備不十分

    主文
本件機関損傷は、主機過給機の整備が十分でなかったことによって発生したものである。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年10月2日14時05分ごろ
伊勢湾
2 船舶の要目
船種船名 油送船日伸丸
総トン数 749トン
登録長 66.06メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,323キロワット
3 事実の経過
日伸丸は、平成7年12月に進水した油送船で、連続最大回転数300の、過給機付4サイクル6シリンダ・ディーゼル機関が、逆転機を介しプロペラ軸系と直結されるとともに、カーゴポンプ2台を前駆動するようになっており、主機には石川島汎用機械株式会社が製造した、RH223型と称する過給機が装備され、ロータ軸のタービン側及びコンプレッサ側が、フローティング軸受やスラスト軸受によりそれぞれ支持されていた。
過給機には、主機潤滑油系統から給油され、サンプタンクのシステム油が、主機直結ポンプまたは電動補助潤骨油ポンプによって、吸入側の金網式1次こし器から、吐出側の自動逆洗式2次こし器と潤滑油冷却器と主管を経て、約3キログラム毎平方センチメートルの油圧で、クランク軸や過給機などに分岐され、同油は遠心清浄機で常時側流清浄されるとともに、システム油と同銘柄の潤滑油がシリンダライナに注油されており、設定値に対する主管の油圧低下または油温上昇により、機関制御室の警報装置が作動するようになっていた。
本船は、同8年1月に竣工のあと、千葉港または名古屋港周辺の製油所から、各地油槽所への重油輸送に月間15航海ほど従事し、主機について全速力を毎分275回転に運転し、複式になった1次こし器を約1箇月ごとに、遠心清浄機を2ないし3箇月ごとにそれぞれ開放掃除し、システム油量がシリンダ注油のためやや増える傾向で、運転時間が約2,300時間となった同年10月に保証ドックが行われ、過給機は整備間隔の4,000時間に達していなかったので開放整備されなかった。
ところで過給機は、その後の運航で運転時間がほぼ4,000時間となり、経年的に汚損されたシール部からカーボンなどの異物が侵入したか、タービン側のシール部損傷により排ガス中の異物が侵入したかして、いつしか軸受メタルに微小な傷を生じ、摩耗が次第に進行していたところ、翌9年7月に乗船したA受審人は、同年9月に1次こし器を掃除した際、金属粉などの異物を認めず、翌10月が中間検査のドックで、精密フィルタのIHI-MOATTIオートフィルタと称する、2次こし器の自動ブローの状態も正常であったことから、過給機軸受の摩耗がコンプレッサ側やスラスト軸受にも拡大され、同機が損傷するおそれのある状況となったことに気付く由もなかった。
こうして本船は、A受審人ほか6人が乗り組み、同年10月2日名古屋港第5区の製油所岸壁で、重油1,950キロリットルを積んで京浜港東京区向け出港し、船橋操縦により主機を毎分270回転に運転して航行中、過給機各軸受の摩耗がさらに進行したため、軸心が偏移してロータ軸とケーシングが接触し、同日14時05分ごろ野間埼灯台から真方位287度1.1海里の地点において、過給機が異音を発した。
当時、天候は雨で風力3の東北東風が吹き、海上には白波があった。A受審人は、当直中に異音を認めて各部点検の結果、過給機の異常と判断して機関室操縦に切り換え、異音を発しない程度に主機を減速して愛知県衣浦港に入港し、翌3日過給機を完備品と取り替え修理した。

(原因)
本件機関損傷は、主機過給機の整備が不十分で、軸受部にいつしか異物が侵入して微小な傷を生じ、それが進行し摩耗したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。






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