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1998年(平成10年)

平成10年横審第43号
    件名
漁船第八十八真賀丸機関損傷事件〔簡易〕

    事件区分
機関損傷事件
    言渡年月日
平成10年11月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

川原田豊
    理事官
相田尚武

    受審人
A 職名:第八十八真賀丸機関長 海技免状:五級海技士(機関)(機関限定・旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
発電機損傷

    原因
冷却海水系の配管に対する点検不十分

    主文
本件機関損傷は、冷却海水系の配管に対する点検が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年11月2日07時30分ごろ
ミクロネシア連邦チューク島南方
2 船舶の要目
船種船名 漁船第八十八真賀丸
総トン数 19.96トン
登録長 16.63メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 478キロワット
3 事実の経過
第八十八真賀丸は、昭和50年5月に進水し、平成8年8月に中古で購入された、まぐろ延縄漁業に従事するFRP製漁船で、操舵室下の機関室には、前部隔壁付きの上段に、冷凍機や主配電盤、操舵機油圧ポンプなどが下段には船尾側両舷の燃料タンクの間に主機が据え付けられ、左舷側燃料タンク前の中ほどに蓄電池や燃料サービスポンプが、また主機の船首側両舷に、ディーゼル機関(以下「補機」という。)駆動の、いずれも三相交流225ボルト40キロボルトアンペアの発電機が、右舷側1号機は補機と直結されてその船尾側に、ベルト駆動される左舷側2号機は補機と並列のその舷側沿いにそれぞれ設置されていた。
補機の冷却は、清水による間接冷却方式で、直結の清水ポンプ及びベルト駆動の海水ポンプが装備され、冷却清水が潤滑油冷却器と各シリンダジャケットを順に冷却したあと、冷却器を経て清水ポンプに循環し、一方海水ポンプで吸引された冷却海水が補機前側の清水冷却器を通り船外排出されており、2号補機に至る冷却海水管が、左舷側中ほどの船底弁から、同補機と発電機の間に導かれて立上り、ゴムホースを中継ぎして海水ポンプに接続されていた。
ところで2号補機の海水管とホースの接続は、同海水管に差し込み溶接付けされた、小径管にホースがかん合されており、本船購入時にA受審人がそれをビニールホースと取り替えた際、溶接部が経年的に腐食衰耗している状況であったが、同人は漏水を認めなかったので大丈夫と思い、その後も海水管系などを十分に点検せず、衰耗した溶接部から漏水するおそれがあることに気付かなかった。
こうして本船は、A受審人ほか8人が乗組み、同年10月15日ミクロネシア連邦ヤップ島を出港し、2号発電機を運転しながら東カロリン諸島周辺の漁場で操業中、同補機冷却海水管の前示溶接部が破口して海水が噴出し、それが同発電機に降りかかって吸い込まれ、11月2日07時30分ごろ北偉06度39分東経152度56分の地点において、内部コイルが焼損するとともに船内電源を喪失した。
当時、天候は晴で風力4の南西風が吹き、海上には白波があった。
A受審人は、操舵室で当直中、異常に気付いて機関室を点検すると、2号発電機通風口からの発煙や異臭を認めて運航不能と判断し、本船は、操業を取り止めて同連邦チューク島に入港し、日本から発電機を取り寄せて同発電機を取り替えるなど修理された。

(原因)
本件機関損傷は、補機を運転するに当たり、冷却海水系の配管に対する点検が不十分で、配管の溶接部が経年的に衰耗して漏水し、それが発電機に降りかかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、補機を運転するに当たり、冷却海水系のホース接続部が、長期間使用されている状況であったから、経年的な衰耗による漏水を見落とすことのないよう、同配管などを十分に点検すべき注意義務があった。しかし同受審人は、購入時に漏水していなかったので大丈夫と思い、同配管を十分に点検しなかった職務上の過失により、漏水してそれが降りかかり発電機を焼損させるに至った。






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