|
(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成9年9月17日12時10分 岡山県岡山港 2 船舶の要目 船種船名
貨物船第三光輝丸 総トン数 377トン 全長 56.52メートル 機関の種類
ディーゼル機関 出力 735キロワット 3 事実の経過 第三光輝丸(以下「光輝丸」という。)は、船尾船橋型油タンカー兼引火性液体物質ばら積船兼液体化学薬品ばら積船で、A受審人ほか5人が乗り組み、空倉のまま、船首1.0メートル船尾3.8メートルの喫水をもって、平成9年9月17日05時55分愛媛県新居浜港を発し、岡山県岡山港内にある旭川河口の荷役岸壁に向かった。 ところで旭川河口は、幅約500メートルで、同川中央部水面下には、河口から上流約500メートルの地点までの間、及び河口の上流約750メートルの地点から同上流約1,500メートルの地点までの間にそれぞれ導流堤(以下「第一導流堤」及び「第二導流堤」という。)が設けられていた。第一導流堤南端には黒色立標が、同北端には黒色ドラム缶形灯浮標が、同北端の北西方約50メートルには赤色ドラム缶形灯浮標が、第二導流堤の北端及び南端にはそれぞれ黒色立標が設置されていた。 また、光輝丸が目的とする荷役岸壁は、河口から約1,100メートル上流の旭川右岸にあり、同岸壁への着岸船舶は、第一導流堤東側の旭川左岸寄りを北上し、前示両ドラム缶形灯浮標の間を西行して第二導流堤に出て旭川右岸寄りを北上して目的岸壁前面海域に達する航行経路をとることとなっていた。 入航に先立ち、A受審人は、過去、旭川右岸の荷役岸壁に着岸した経験がなかったため、予め海図第155号にあたり旭川河口から目的岸壁に至る前示航行経路を調査して知っていた。 こうして、A受審人は、同日09時00分ごろ備讃瀬戸南航路内から単独の船橋当直に就き、11時49分岡山港西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から077度(真方位、以下同じ。)1,950メートルの地点に達したとき、針路を317度に定め、機関を微速力前進・停止と繰り返し、他の乗組員を甲板上の入港配置に就け、約2ノットの対地速力で手動操舵により進行した。 A受審人は、12時01分西防波堤灯台から057度1,700メートルの前示黒色ドラム缶形灯浮標の手前の地点に達したとき、河口から自船の右舷側を追い越す態勢の数十トン程度の他船と接航する状況となり、間もなく、黒色ドラム缶形灯浮標に並航したが、前示他船の動向に気を奪われ、同灯浮標を見落としたため、旭川右岸寄りに進入する転針地点に未だ達していないものと思い、船位の確認を十分に行うことなく、前路に視認していた第二導流堤南端の黒色立標を転針目標と思い込んだまま同川左岸寄りを上航し続け、12時08分半左舷正横少し前に岸壁を視認したので、左転したところ、光輝丸は、12時10分西防波堤灯台から039度1,650メートルの旭川中央部水面下に設置した第二導流堤上に、265度を向首して跨ったまま停止し、運航が継続できなくなった。 当時、天候は晴で風力2の北風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。 A受審人は、行きあしが止まったので、本件に気付き、救助依頼した曳船により、同日21時40分引き降ろされたが損傷はなかった。
(原因) 本件運航阻害は、岡山港内の旭川を上航中、船位の確認が不十分で、同川中央部の第二導流堤に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、単独の船橋当直に就いて、岡山港内旭川の左岸寄りを経由して同川右岸の荷役岸壁に向けて上航する場合、同川中央部の導流堤により、運航が阻害されるおそれがあったから、転針地点を誤らないよう、船位を十分確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、たまたま通りかかった他船の動向に気を奪われ、船位を十分に確認しなかった職務上の過失により、予定転針点を通過して転針したため、前示導流堤に跨ったまま行きあしが停止して運航阻害を招き、航海の継続を中断させるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。 |