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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成7年7月9日14時30分 大阪港 2 船舶の要目 船種船名
プレジャーボートビー・ビーエムシー 登録長
5.37メートル 機関の種類 電気点火機関 出力 114キロワット 3 事実の経過 ビー・ビーエムシーは、昭和50年に建造されたFRP製プレジャーボートで、アメリカ合衆国マーキュリーマリン社製の、MCM898型と称する船内外機式推進装置を装備し、電源装置として、主機でベルト駆動される交流発電機(内蔵する整流器で発生交流を直流に整流して外部に供給する発電機、以下「オルタネータ」という。)と、バッテリーとを備え、両装置が電気的に並列に接続され、主機運転中はオルタネータで主機点火プラグ、照明、電気計器等は給電するとともにバッテリーを充電し、一方、主機停止中はバッテリーを照明ほか主機始動時のセルモータ駆動等の電源に使用するようになっていた。 A受審人は、平成7年6月友人7人とともに、バッテリーが12ボルト75アンペア時の新品に新替えされた本船を共同購入し、神戸市東灘区深江南町の係留施設を係留地と定め、レジャー用に2度ほど使用したところ、オルタネータの出力配線のうち1本が、運転中の振動の影響で圧着端子の付け根部分で切断した。この結果、バッテリーは、主機運転中もオルタネータに替わり各部に給電し続けることとなり、充電されないまま徐々に消耗する状況となった。 本船は、A受審人が船長として1人乗り組み、友人3人を同乗させ、海水浴の目的で、同年7月9日09時係留地を発し、大阪府貝塚市の二色の浜に向かった。10時30分ごろ本船は、大阪府阪南港の阪南3区防波堤近くを航行中、A受審人が位置を確かめる目的で、主機の回転数を下げてクラッチを切り、しばらく惰力で進行したのち、再びクラッチを入れたところ、バッテリーが消耗して、点火プラグの印加電圧が低下していたことから、主機が停止した。 A受審人は、主機を始動しようとしてスタータースイッチを2、3度操作するうち、セルモータが全く回らなくなり、付近を航行中の船舶に曳航(えいこう)されて同日12時ごろ阪南港第2区のプレジャーボート係留施設に到着した。同施設で同人は、主機運転中にバッテリーが放電してしまったことにさして疑問も抱かず、充電さえすれば大丈夫と思い、専門業者に依頼して電源回路に断線等がないか点検することなく、本船に横付けした同施設のプレジャーボートから、しばらくバッテリーを充電してもらったのち、主機の始動に成功したので、海水浴をあきらめて同乗者3人とともに係留地に帰航することとした。 こうして本船は、同日14時ごろ同施設を発し、係留地に向けて帰航中、再びバッテリーが消耗し、点火不良によって運転音が断続的なものに変化したのち主機が停止し、14時30分堺浜寺北防波堤灯台から真方位273度2海里の地点で、航行不能となった。 当時、天候は曇で風力4の西南西風が吹き、海上はやや波が高かった。 A受審人は、携帯電話で海上保安部に救援を求め、巡視艇に曳航されて大阪港堺泉北区の岸壁に着岸し、のち、本船は、オルタネータの断線箇所が接続され、バッテリーの充電状況が確認できるよう、操縦席の電流計が電圧計に取り替えられた。
(原因) 本件運航阻害は、航行中、オルタネータの出力配線が断線していたことから主機が停止した際、電源回路に断線等がないか点検不十分で、同断線部が接続されず、バッテリーが消耗するまま航行が再開されたことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、航行中突然主機が停止し、バッテリーが放電してしまっていることを認めた場合、電源回路に断線等の不具合が発生しているおそれがあったから、専門業者に依頼して電源回路に断線等がないか点検すべき注意義務があった。ところが、同人は、バッテリーの充電さえすれば大丈夫と思い、電源回路に断線等がないか点検しなかった職務上の過失により、充電されたバッテリーが再び消耗するまま航行を再開し、本船の運航不能を生じさせるに至った。 |