6 内容等
「成年後見制度の展望」 升田 純
成年後見制度を「広義」(高齢者等への世話制度を包括する)と「狭義」(民法上のものに限定する)に分け、高齢社会における需要を満たすものは後者であることを強調した。そして、現在進行中の民法改正の意義と問題点、後見人の役割等について問題点を指摘し、広義の成年後見制度の機能は福祉的需要に応えることにあること、その場合、支援の担い手の役割が重要であること等について指摘した。
「介護保険と成年後見との関連」 阿部 和光
介護保険では介護サービスの利用が契約型へ転換するために、要介護者の主体的意思決定が重要な要素となることを強調した。そして、ケアマネジメントにおける成年後見の有効性と限界を指摘し、今後の課題として、要介護者のためのアドボカシーサービスを強化することと伝統的権利救済の限界を克服するためにオンブズパースンと苦情処理機関を設置する必要のあること等を指摘した。
「要介護者の生活実態から」 小幡 秀夫
社会福祉士としての実体験を踏まえ、「福祉サービスの拒否」「介護上の虐待」「財産管理」「生活アドバイザー的関わりが必要な事例」「悪徳商法」など、5つの典型的な事例を報告し、各事例が求める後見的援助と内容を分析し、どのような援助・支援が求められており、それに対してどのような社会的対応が必要とされているかを具体的に指摘した。
「家庭介護と福祉行政の課題」 依田 精一
在宅高齢者の自己決定権が尊重されるには、「どこで・誰に・どんな介護を受けたいか」という本人の希望がかなえられることが必要であり、その前提条件を整備するのが行政の仕事であることを、要介護高齢者の福祉ニーズ実態調査の体験をもとに具体例をあげて指摘した。また、介護関係情報組織の改革や本人の権利擁護のための組織を新たに作る必要がある事などを提言として指摘した。
「高齢者のための相談・支援システムの現状と課題」 上家 富靖
発足して1年経過した大阪後見支援センターの設立過程(基本理念等)とセンターのシステム(相談事業の流れ・経済生活支援システムの運用上の諸問題等)、および1年間の実績などについて詳細に報告した。今後の課題として、一元的総合的相談機関の整備・関係行政機関の連携・行政と法曹界の連携・意思能力確認・契約成立手法の確立・任意後見などへの監督権の確立などが必要であることを指摘した。