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1] 地球温暖化時代における測地学の役割(講演者:国立天文台 内藤勲夫)

人間活動によってもたらされる大気中の炭酸ガスの増加が地球温暖化を引き起こしていることは今や徐々に観測事実となりつつある。

しかしながら、果たして水蒸気量や降水量が本当に増加しつつあるのか、あるいは現在観測されている海面上昇が本当に温暖化の結果なのかと言うとまだほとんど見当がついていない。その第一の理由はそれらの観測の精度の低さにある。例えば、現在、水蒸気量の観測は200km程度の極めて粗い間隔で設けられている高層気象台のラジオゾンデの観測に依存しているが、これでは数10平方km程度の極めて局所的な地域に集中豪雨をもたらす水蒸気量の分布を捕らえることはできない。こうした中で、GPS(Global Positioning System:汎地球測位システム)、衛星海面高度計、衛星重力計などの様々な測地学的観測手法が登場し注目されている。

ここでは、そうしたGPSの役割をはじめとして、衛星高度計や衛星重力計などによる海面上昇の検証の観測研究など、測地学が取り組む地球環境科学の最前線の取り組みなどを手短に紹介する。

2] 地球変動を海から覗く(講演者:東京大学海洋研究所 藤本博巳)

測地学という学問の特徴として、極めて精度の高い観測を行っていることと、それによって現在の地球変動を実測できるという点を挙げることができる。その観測の時間スケールとして、GPSなど最新の宇宙技術を駆使したものでは10年程度の変動が観測されている。海底には最近の約2億年間の地球変動が記録されている。10年という時間は、2億年という海底の年代からみればほんの一瞬である。しかし高精度の測地観測は、その一瞬の間に観測された海洋底の拡大運動が、海洋底に残された記録から地学的に求めた運動と極めてよく一致することを示した。

現在の固体地球の変動は、基本的には海洋プレートの拡大と沈み込みによって支配されており、海洋プレートの境界は地球上で最も大きな変動が起こっている場所である。しかし特殊な場所を除けばその変動帯は電波の届かない深海底にある。

 

 

 

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