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藤田干尋氏は森田療法の持つ普遍性と現代性について、この療法が生まれた歴史的な経緯を解き明かしながら、森田正馬の人間観が人間の存在そのものを深く洞察したものであったがゆえに、現代においてもいささかもその価値を減じることなく継承してきたことを、情熱を持って語られた。そして、森田療法が今、アメリカ、フランス、ドイツの心理療法家から、世紀末的人間の不安と無気力を癒してくれる特異な精神療法として注目を集め始めた理由と、その必然性についても、説得的な解説がなされた。

岡本常男氏は、自らのシベリア抑留体験という心的外傷からの立ち直りに基づいて、極限状態におかれた絶望的心理状態の中でもなお、わずかな光明を頼りにして未来を志向することの意味を、また、極度の神経衰弱状態からの自らの意思を信じての回復の体験を通して得られた、生きる尊さの確信を生き生きと伝えられた。岡本常男氏の苦難からの脱却は、新たな生きる目標の獲得につながる森田正馬の人間愛や、森田療法の持つあるがままの自然な生き方という基本理念を具現化したものだとして、今なお森田療法が持つ役割についてわかりやすく説明された。

 

 

 

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