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4. 海洋汚染の監視取締り

 

海上保安庁では、全国に11の管区海上保安本部、118の海上保安部署等、14の航空基地を置き、354隻の巡視船艇、70機の航空機を保有している。

また、海上環境事犯の捜査にあたっては、海域へ排出された油等の排出源を特定するために高度の化学的な分析鑑定技術を必要とするため、海上保安試験研究センター(立川市)に化学分析課を、各管区海上保安本部に分析室を設置し、同時多成分計測システムやガスクロマトグラフ、赤外分光光度計及びガスクロマトグラフ質量分析計など最新の分析機器を整備すること等により、分析鑑定体制の充実強化を図り、油等の違法排出に対処している。

これに加え、巡視船艇・航空機を効率的に運用し、我が国周辺海域における海洋汚染の監視取締りを行っている。特に、東京湾、大阪湾を含む瀬戸内海等の船舶がふくそうする海域、タンカールート海域等の海洋汚染の発生する可能性の高い海域には航空機及びヘリコプター搭載型巡視船等を重点的に配備し、海空連携による広域的な監視取締りに当たっており、この結果、年間800件前後の海上環境関係法令違反を摘発している。

これら違反の内容は、船舶からの油及び有害液体物質の違法排出並びに廃棄物・廃船違法投棄等の事犯が全体の8割を超えており、未だ関係者の海洋環境保全の意識が徹底されていないことを示している。

海上環境事犯は、監視取締りが厳しくなるに従い、その目を逃れるため手口がますます巧妙となり、潜在化する傾向が見られるため、工場排水の採水分析及び夜間監視装置の活用等により監視を強化している。

また、海上保安庁が確認した油による海洋汚染のうち、排出源不明のものが全体の約2割を占めているが、これらのなかには、船舶から夜間排出されたものが多数含まれているおそれもあるので、これら汚染の排出源を究明するための技術的な手法の開発や夜間における監視体制を強化していくこととしている。

このように海上保安庁では、今後とも監視取締りを一層強化していく方針であるが、もとより海上保安庁の監視取締りの強化や法規制の強化だけでは海洋汚染を防止しうるものではなく、海に係る全ての人々が海洋汚染の実態を十分認識して、青い海を取り戻すための努力をしていくことこそが必要である。

 

 

 

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