4. 食料並びに安全及び衛生
船員は、孤立危険共同体たる船舶を職場とすると同時にまた生活の場としていることから、その食料の確保危険防止、安全・保護の対策を講ずることはきわめて重要なことである。このような見地から、船員法上は以下の通りの規定をおいている。
(1) 食料の支給
1] 一般原則
船舶所有者は、船員が乗船し、航海、荷役、船舶保全その他の船務に従事する期間中及び負傷又は疾病のため職務に従事しない期間中、その費用でこれに食料を支給しなければならないこととなっている(第80条第1項、則第50条)。
従って、例えば日帰り船員で通常の朝・夕食の時間には船務から離れているような場合には、朝・夕食の支給義務はないことになる。
2] 一般原則に加えて更に次のような規定が設けられている。
(i) 遠洋、近海船で総トン数700トン以上のもの、又は一定の漁船(第二種又は第三種の従業制限を有する漁船及び第一種の従業制限を有する漁船で、さけ・ます流網漁業、さけ・ますはえ縄漁業又は機船底びき網漁業に従事するもの)の船員に支給する食料は、運輸大臣の定める食料表によらなければならないことなっている(第80条第2項)。
(ii) 総トン数1000トン以上の遠洋、近海船、第三種の従業制限を有する漁船の船員に支給する食料を船内で調理する場合には、運輸大臣が一定の要件((イ)20歳以上であること、(ロ)船舶に乗り組んで3年以上(海員学校本科司ちゅう科、海員学校司ちゅう科又は司ちゅう・事務科卒業者にあっては2年以上)調理に関する業務に従事した経験を有すること、(ハ)船舶料理士試験に合格したこと(*1))を備えた者に交付する船舶料理士資格証明書を受有する船舶料理士にその調理を管理させなければならないこととなっている。
(船舶料理士に関する省令第1条、第2条、第3条)
(*1) 次に掲げる者については、船舶料理士試験に合格したものと見なされる。
1] 海員学校本科司ちゅう科、海員学校司ちゅう科又は司ちゅう・事務科卒業者
2] (財)日本船舶養成協会の塩釜海技学院、長崎海技学院及び沖縄海技学院の課程を修了した者
3] 調理師、栄養士、その他1]、2]と同等以上の能力を有すると認められる者
(船舶料理士に関する省令第2条第2項)
(2) 安全及び衛生
1] 個別安全・衛生基準
船舶所有者及び船員は、船内の労働安全衛生に関して命令の定める事項を遵守しなければならないとこととなっている(第81条第1項から第4項)。例えば、医薬品その他の衛生用品・医療書の備置、安全担当者・衛生担当者の選任等である(則第53条、第54条、船員労働安全衛生規則(昭和39年運輸省令第53号)第2条、第7条)。その他の命令として船員電離放射線障害防止規則(昭和48年運輸省令第21号)がある。