ターミナルオペレーターとして、あるいは総合的なロジスティクス・サービスの提供者として海外へ進出する、2]進出先として魅力がある場所は、その港湾がもつ戦略的な重要性に加え、進出後のビジネスの自由が十分に保証されているところ、3]株式取得等の方法で海外ターミナル会社の経営をコントロールし、シンガポール港運営(株)の独特のシステムを持ち込むことができること。海外ベンチャーの事例では、子会社を使ったコンサルティング・サービスの提供から提携関係を築き、これを土台として海外でのベンチャー会社設立とターミナル経営に至るまでのパターンをみることができる。
港湾庁の海外における事業は、1970年代初頭から始まった。当時のおもな事業は、港湾庁が所有している子会社や関連会社による、海外での港湾施設の設計やターミナルオペレーションの管理、コンサルティング・サービスであった。
1996年、港湾庁は国際ビジネス部門(International Business Division)を新設し、海外でのベンチャービジネスを積極的に展開し始めた。現在、シンガポール港運営(株)が手がけている海外のベンチャービジネスは、大連(中国)、福州(中国)、トゥティコリン(インド)、ピパヴァヴ(インド)、アデン(南イエメン)、ヴォルトリ(イタリア)などがある(図表II−3−9)。