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しかも五大港はその後背地である関東、東海、近畿という三大都市圏の貨物だけでなく、それ以外の地方圏のコンテナ貨物も大量に取り扱っている、換言するならば、地方圏はコンテナ物流のかなりの部分を五大港に依存しているのである。集積のメリットが働くにもかかわらず地方港がコンテナ港湾として発展した理由は以下の要因があるからである。

1] 港湾整備政策の転換とコンテナ港湾施設の地方分散

80年代後半以降、「多極分散型国土の形成」あるいは輸入促進を目的として、中央省庁(特に国土庁や運輸省)は地方コンテナ港湾整備に前向きになるとともに、各地方自治体も「地方の国際化」という掛け声のもとに、中央省庁のコンテナ港湾機能の分散政策に積極的に呼応していった。その結果、地方港におけるコンテナ施設整備が進展した。

2] コンテナ定期船業界の構造変化

周知のように、1984年における米国海運法の荷主有利な方向での改正を直接的な契機として、そして海運同盟以外の盟外船社の急激な台頭を根本的な要因として、海運同盟は形骸化の一途をたどった。その結果、コンテナ定期船業界における競争激化からコンテナ船社が地方港にも配船するようになった。

3] 国内輸送コストの高さ

物流二法の施行を契機としたトラック輸送業界における社会的規制の強化と経済的規制の緩和が、長距離輸送コストの引き上げと同時に運賃値上げを困難にした。このことが長距離輸送の利幅の縮小と中・短距離輸送の利益率の相対的な上昇をもたらした。また内航運賃は内航輸送業界の低競争構造により高運賃が定着している。これら長距離輸送の不利化および国内輸送コストの一般的高さが五大港─地方圏間国内輸送を短縮化する傾向を生み出し、地元コンテナ港湾の利用を促進した。

4] 荷主の対船社交渉力の向上

コンテナ定期船業界における競争激化とあいまって大荷主の対船社交渉力が増大するとともに、大荷主の多国籍化によって国境を越えた中間財物流が活発化したため物流コストの削減とリード・タイムの短縮化を目的として、荷主が荷主近接型物流を追求しはじめた。現実に貨物が発生しなければ物流需要は生じないことを考えるならば、この大荷主の物流に対する需要変化および姿勢の変化が、コンテナリゼーションの進展という技術革新とあいまって現在の物流構造の再編成を推し進めている根本的な要因であると言える。

5] 東アジア主要港の台頭

東アジア主要港が急激に台頭し国内主要港の代替港として機能しはじめた。

 

(2) 地方コンテナ港湾の限界

しかし地方港がコンテナ港湾として発展していると言っても、その前途は必ずしも明るいものではない。地方港の発展には発展要因そのものの中にすでにさらなる発展を阻害する要因がビルト・インされているからである。阻害要因とは次のものである。

 

 

 

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