日本財団 図書館


従来の調査・研究のほとんどが荷主の立場をあまり検討してこなかったとともに、荷主そのもののタイプについては何の考察も行ってこなかった。本章では、前述したように、大荷主と中小荷主に荷主を分類してそれぞれの港湾物流に対するニーズの違いを両者それぞれが持つコンテナ貨物の物流特性の違いに投影させて検討する。

2] 集荷圏の範囲の設定

第2にコンテナ港湾の後背地の空間的範囲をどこまで取るのかという点である。地域産業の振興を語る場合、対象となる地域の空間的範囲がどこになるのか、直近の後背地になるのか、国内遠隔地になるのか、さらには他の東アジア諸国まで含むものとなるのかということが問題となる。すなわち、当該コンテナ港湾の集荷圏=港湾物流サービス提供圏の適切な空間的範囲はどこまでなのかということについても検討が必要とされる。

3] コンテナ港湾の競争力は複数存在するのか?

第3にこれら2点を考慮する場合、コンテナ港湾の「競争力」とは一般的なものとして想定できるものなのか、言い換えるならば、「競争力」とは1つではなく、複数存在するのかどうかという点である。この点については荷主のタイプ(大荷主と中小荷主)とその空間的配置(直近の後背地、日本国内の遠隔地、東アジア域内)という2つの軸を組み合わせて考察することが必要となる。

これら3つの論点を、コンテナ港湾の集荷戦略という切り口から解釈するならば、どのようなタイプのコンテナ貨物を集荷することが当該コンテナ港湾の後背地の産業振興につながるのか、あるいは当該港湾がどのようなタイプのコンテナ貨物の集荷に対して競争力を持っているのかということになる。本章では日本のコンテナ港湾の機能集積と分業のあり方を、このコンテナ貨物の類型化という観点から、日本のコンテナ港湾の競争力を再検討することとしたい。

 

(4) 本章の主張点

ここで結論先取り的に本章の主張点を示しておこう。本章の主張点は、1]地元中小企業育成型港湾物流サービスの充実と、2]当該港湾物流サービス充実型港湾経営の模索である。

 

1) 地元中小企業育成型港湾物流サービスの必要性

日本経済、とりわけ関西経済は中小企業が多く、中小企業が産業の基盤技術を保持しているケースが多い。また中小企業は地元定着性の高い企業であることから、技術面や雇用面、産業集積面等の経済活動面さらには税収面でも継続的に地元経済を支える主力である。直接の後背地である地元経済の振興を物流面から支えるものであるというコンテナ港湾の本来的役割に立ち戻るならば、大荷主=大企業向けの港湾物流サービスの充実だけでなく、中小企業が開業・事業拡大しやすい物流環境を作るという中小企業のインキュベイション機能をもコンテナ港湾は持つべきである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION