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アジアのGDPの作用に比べると、日本とアジア9か国・地域の間の為替相場比率作用は極めて低いレベルにある。その中では、タイの為替相場のもつ物流喚起度は極めて大きく、弾性値で1.951である。神戸港からタイヘの輸出には他のいかなる要因にも増して為替相場の動向が支配している。一方、台湾・シンガポール・マレーシアについては、いずれも作用の程度は低いが、為替相場が合理的方向とは逆方向に物流を規定している。たとえ円安になっても、輸出物流が合理的方向に逆らって減少に向かう貿易相手国があるのである。いわば、これらの3か国・地域では、為替相場動向とは関わらずに、神戸港の物流相手としての重要性が位置付けられている。例えば、台湾の神戸港への高いトランシップ依存性、シンガポールの金融・物流・情報センター、マレーシアの生産センターとしての役割の位置付けである。

3] 優れた港湾サービスの下で発生する競争劣位

神戸港のコンテナ化率は、対台湾輸出物流を除き期待された効果を生んでいる。特に対シンガポール輸出物流については、2.122という極めて高レベルの弾性値が成立しており、シンガポールの物流センター的ネットワーク機能の重要性を認めることができる。

このように神戸港は好ましい港湾サービスを輸出物流のために準備しておりながら、トランシップ貨物のみならず取扱貨物の全体的減少に直面した結果、そのコンテナ貨物集中度が1%低下すれば、対アジア輸出物流量は1.302%も減少するという結果が得られている。それはまさにコンテナ化率でとらえた目に見える港湾サービス戦略が、実際には効果を発揮していない状況を示唆するものである。その原因はどこにあるのだろうか。神戸港単独経営という現在の経営のフレームワークの中では、解決し得ない問題があり、それが経営戦略とその効果を制約しているということはないのであろうか。そうであれば、時代の要請するロジスティクス戦略指向性をもった港湾経営の視点でもって、現在の経営のフレームワークを改変する必要があろう。

 

2) 大阪港の対アジア輸出物流行動

1] 対ASEAN物流に顕著な非合理的な決定因の作用

図表I-3-2に掲げた大阪港の対アジア輸出物流行動関数の推定結果の特徴は、どこにあるのだろうか。そこで、神戸港と大阪港におけるNIES向け輸出物流の決定因弾力性を、韓国向け物流を例にとって、日本の直接投資弾力性、韓国のGDP弾力性及び円/ウォンの為替相場比率弾力性について比較して見よう。そうすれば、直接投資弾力性と為替相場比率弾力性にはほとんど差はないけれども、GDP弾力性については神戸港の弾力性がほぼ1の中立レベルにあるのに対し、大阪港では0.7台の非弾力レベルにある点で差の存在を主張できよう。

 

 

 

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