2) 港湾別輸入物流関数
アジア9か国・地域から神戸港と大阪港に輸入されたコンテナ物流量をとらえた港湾別輸入物流関数の基本型は、
OIA:神戸港の対アジア9か国・地域向け輸出コンテナ物流量(1,000フレートトン)
HIA:大阪港の対アジア9か国・地域向け輸出コンテナ物流量(1,000フレートトン)
とすれば、
(4) OIA=f(DIR、GDJ/GDA、FRJ/FRA、WPJ/WPA、OIWC/OIW、HIOI)
(5) HIA=f(DIR、GDJ/GDA、FRJ/FRA、WPJ/WPA、HIWC/HIW、HIOI)
である。ここに
GDJ:日本の1人当りGDP(USドル)
WPJ:日本の卸売物価(1990年=100)
WPA:アジア9か国・地域の卸売物価(1990年=100)
OIW:神戸港の対世界コンテナ輸入量(1,000フレート・トン)
HIW:大阪港の対世界コンテナ輸入量(1,000フレート・トン)
OIWC:神戸港の対世界貨物輸入量(1,000フレート・トン)
HIWC:大阪港の対世界貨物輸入量(1,000フレート・トン)
HIOI:神戸港の輸入コンテナ貨物の集中度(%;OIW/日本の対世界輸入コンテナ貨物総量)
である(データの出所は、大蔵省統計、経済企画庁『アジア経済分析』、日本船主協会『海運統計要覧』、港湾当局公表統計資料、IMF, International Financial Statistics)。これらの関数を指数関数型に特定化して両辺に対数をとれば、例えば神戸港の輸入物流関数である(4)式は、
(6) In(OIA)=b0+b1 In(DIR)+b2 In(GDJ=GDA)+b3 In(FRJ/FRA)+b4 In(WPJ/WPA)+b5 In(OIWC/OIW)+b6 In(HIOI)
のように展開される。同式の係数の符合条件は、一般的には
b1、b2、b4、b5、b6>0;b3<0
である。
アジアへの直接投資は水平分業の下で、神戸港を通ずるアジアからの輸入を増加させると予想されるので、b1は正の符号をとるであろう。また日本の1人当りGDPがアジアの1人当りGDPを上回って増加すれば、日本の輸入活動は活発になり、神戸港からの輸入も促進されるから、b2も正になるであろう。為替相場比率の上昇は、ここでの定式化では円安の進行を意味するから、神戸港の輸出量は減少するであろう。b3は負になると見られる。また輸入に特有な要因である卸売物価指数の比率は、分子である日本の物価がアジア9か国地域の物価よりも高ければ、日本の輸入が促進され、神戸港の輸入物流量も増加すると考えられるから、b4は正である。
しかし実証のプロセスにおいて後に見るように、輸入物流関数については、このような合理的な符号条件が現実には成立していないことのほうが多いのである。