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・ 「水平的統合の戦略効果」は、ヨーロッパ航路西航市場と大西洋西航市場の2つの航路市場においてコンテスタブルな市場へと導くほかは、残りの4航路においてプラスの効果を生んでいる。

かくして仮想的なグローバル・マネジメント市場は、分散的経営に基づいて運営される現実市場に比較して、多くの点で好ましい経営効果をもたらす可能性がある。その中でも、とりわけ垂直的統合の効果のほとんどがプラスの方向に転じている点が興味深い。垂直的統合効果がプラスになる確率は、分散経営で1/12、グローバル・マネジメントで10/12である。その様な好ましい転換が発生した背景には、製造業を始めとする荷主企業のグローバル・ロジスティクス行動がある。コンテナ船業のグローバル・マネジメントへの転換は、垂直的統合戦略を本来の付加価値戦略へと蘇らせるであろう。

もっとも水平的統合の戦略効果がプラスである確率が最大であるのは、現実の分散経営のケースで11/12、グローバル・マネジメントでは8/12である。このことも、現行の分散経営が水平統合指向であるのに対し、グローバル・マネジメントが垂直統合指向であることを示唆するものである。

結論を言えば、コンテナ船業は、現行の分散経営や隣接航路市場との併合的経営を越えて、グローバルな視点からのマネジメントを展開する必要がある。とりわけここでは、垂直的統合戦略がグローバル経営によって蘇った点に注目したい。コンテナ船業がネットワーク・プロバイダーとしての好ましい機能を果たし始めることができた理由は何なのか。それは、このようなグローバルなネットワークが荷主のグローバルなロジスティクス戦略に柔軟に対応し切れているからである。もちろんここでは、荷主の調達・生産・販売の諸活動にまで食い込んだロジスティクス戦略に関わるデータを取り扱ってはいない。対応している関係は、コンテナ船業の垂直統合戦略が付加価値を生まなくなって久しかったにも関わらず、グローバル・マネジメントへの転換がその様な付加価値創出の原因となった事である。それはあたかもコンテナ船業のグローバルなネットワーク・プロバイダーとしての機能が、荷主のロジスティクス・システムのオペレーターとしての機能と密接に連結しうる状況を描写していると考えられる。コンテナ船業のグローバル・マネジメントが利益を生んだのは、そこにサード・パーティなどの新たなレベルのロジスティクス活動が含まれ、それが価値を創出したからである。そうでなければ、垂直統合戦略が、ほぼ常に、またほとんどすべての航路において、付加価値を創出する事は不可能であろう。

グローバルなネットワーク・プロバイダーは、好むと好まざるとに関わらず、同時にまたシステム・オペレーターとして行動する責任と義務を負うのである。キャリア型のネットワーク・プロバイダーにとって、グローバル・マネジメントを展開する意義は極めて大きい。コンテナ船業のアライアンス戦略がこのようなグローバル・マネジメントを志向する道程にある事が望ましいのである。キャリア事業とサード・パーティ事業を統合したインテグレーターとしてのコンテナ船業の機能展望と戦略的位置付けがあって初めて、グローバル・マネジメント戦略が、荷主のグローバル・ロジスティクス戦略の中で、新たなサービスを創出する事業へと繋がるのである。

 

 

 

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