第2章 公務員規模・公務員法制
1 公務員数・分類
公務員関連の統計は一般に公表されておらず、現地調査におけるヒヤリングや都度入手される資料によらざるを得ない。政府資料「ミャンマー連邦公務員の概要」(1996年)によれば、1992年現在の公務員総数は1,203,305名であり、そのうち「官報に掲載される公務員」(gazetted officers)は48,453名で、その他は「官報に掲載されない公務員」(non-gazetted ranks)である。本稿では便宜的に、前者を「官報掲載公務員」、後者を「普通公務員」と呼ぶ。官報掲載公務員は全公務員のわずか4%に過ぎない。また、公務員は省庁(Administrative Departments)および国有企業(State Economic Enterprises)の職員に区分される。
一方、アジア開発銀行の『ミャンマー経済レポート』(1995年)によれば、1992年度時点で公務員数は87万5千人と、政府資料に比較して30万人以上も少ない数字が示されている(表3)。両者の相違は、恐らくアジア開発銀行の数字が臨時職員を除いていることが理由と考えられる。アルバイトや短期雇用を除いた、いわゆるプロパーの公務員数は、90万人を割る水準と言えよう。これは推定就業人口のおよそ5%(1994年度)に相当する。
時系列推移をみてみると、SLORCが政権をとった1988年以降、公務員総数は減少傾向にある。まず、国有企業の従業員が1988年度から1994年度にかけて、4万6千人減少した。これは、社会主義経済体制から市場経済への移行をすすめる中で、政府が国有企業の民営化や合理化に取り組んでいるためである。次に、地方政府職員が1991年度までの1万8千人から、92年度以降1千人にまで急減している。これは各郡レベルで設置されている「開発委員会」(Development Committees)の予算が、92年度以降中央財政から切り離され、原則的に独立採算性が導入されたことと関係があると思われる。開発委員会職員のステータスが具体的にどう変わったのか(準公務員なのか、団体職員なのか)は分からないが、少なくとも国家財政から給与を受け取る公務員ではなくなった。
これに対し、中央政府の公務員は増加している。省庁別の人員推移が分からないため推測の域を出ないが、市場経済化進展の中で政府が直接生産活動を担う割合が減少する一方で(=国有企業職員の漸減)、民間経済活動を規制あるいは促進するための政府役割は増大している。これに伴い1988年に18省だった行政府は、1998年には34省へと増加した。多くはポートフォリオの分割により増えた省庁であるが、(3)新たな役割を担うために新設された省もある。(4)こうした省庁の新設が、中央政府公務員数が増加した一因と考えられる。