2. メンタルヘルス対策の内容〔第76・77表参照〕
メンタルヘルス問題は個人のプライバシーに関係することを念頭におき、何らかの対策を「講じている」、「講ずる予定がある」企業を対象にその内容を複数回答で調査したところ、回答企業130社中50.8%の企業が「社内外に相談室を設け、専任のカウンセラーをおいている」を第一に挙げ、「管理・監督者に対し、メンタルヘルス教育・研修を実施している」(32.3%)、「メンタルヘルスに関する冊子を作成し、社員に配付している」(28.5%)の順に回答を得た。この3項目については、どの企業規模においても上位を占めており、この結果がメンタルヘルス対策の具体的な取り組みの体制として一般的な方策と思えるが、それにしても些か数値が低い。
「社員に対し、メンタルヘルス教育・研修を実施している、あるいはメンタルヘルスのカリキュラムを研修教育科目として取り入れている」という項目については、従業員が自分自身の精神の健康状態を自覚し、それをコントロールしたり又はストレスに対応できる柔軟かつ強い精神を養うことができるようにする意味から研修に力を入れる企業割合が高いのではないかと予測していたが、全体で16.9%(「5千人以上」企業規模で28%)と案外低い数値であった。
なお、「その他」としては、「社内看護婦がメンタルヘルスケアーの講習を受けカウンセラーとして活動している」、「人事部が全社員の面談を年1回程度行っている」、「電話による相談窓口の設置」、「産業医がメンタルヘルスの専門家」等を挙げている企業があった。
平成9年版労働白書は労働者が自分の健康管理を進めていく上で関心のある事項として「心の健康体策(メンタルヘルス)」を35.3%の者(約3人に1人)が挙げているが、企業の健康管理制度の種類を企業数割合でみると「メンタルヘルス対策」は7.8%(賃金労働時間制度等総合調査(1994年))と低くなっていると述べている。
今回の当研究所の調査では、メンタルヘルス対策を講じている企業割合は、1994年賃金労働時間制度等総合調査の数値より高い結果を示したが、それでも全体で37.5%に過ぎず、従業員のメンタルヘルス対策をめぐる状況には課題が多い。