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まず、労働力減少に対する「アウトソーシング」による対応は、「千人未満」を除く他の企業規模において7割を超える率で第1の対応策とする回答があり、また、産業別でも「製造業」(75%)、「運輸・通信業」(78%)、「卸売・小売業、飲食店」(62%)、「金融・保険業、不動産業」(72%)の産業がもっとも高い率を示した。

「産業労働事情調査」(1997年)からアウトソーシングの活用状況をみてみると、業務の一部又は全部を外部委託している企業は約5割となっており、その内容も製品の製造・加工・組立や物流、情報処理・システム開発、人事管理、教育訓練・研修等、多種に渡っており、その効果も「専門知識・技術・人材の不足の補充」、「人件費の削減」、「業務量の変動に対する弾力的な対応」を挙げている。

なお、雇用の量的調整がしやすい「短期雇用が可能な非常用者の雇用拡大」を対応策の1項目として列挙し、大きなウエイトを占めるかと予測していたが、全体で41.9%の率しか示しておらず、また、すべての企業規模、すべての産業において「短期雇用が可能な非常用者の雇用拡大」より「アウトソーシング」の活用を労働力減少への対応策と考えている。これは変化の激しい国際市場や厳しい市場競争の中で、流動的で柔軟性に富み、さらには(これがアウトソーシングには重要かと思われるが)高い専門性を有する外部の経営資源を有効に活用することが、効率の面でも質の面でも、さらには組織のスリム化の点をも含め、今後の労働力の減少に対し、企業に高い成果をもたらす極めて有効な手立てであると企業が考えている結果と思われる。このことは、後述する「今後の人事制度の改革」において「アウトソーシングによる定型業務の効率化と組織のスリム化」が高い率(284社回答中71.5%)を示していることからもうかがえる。

次に「高齢者の再雇用」で労働力減少に対応するという策については、「千人未満」の企業が「アウトソーシング」(57%)を上回る率(74%)を示したが、その他の企業規模では、すべて64%の率を示し、規模間格差はなく、一様に「アウトソーシング」の次に労働力の確保策と考えている結果となった。また、産業別でも「農林漁業、鉱業、建設業」、「電気・ガス・熱供給、水道業、サービス業」が「高齢者の再雇用」を第一の対応策に挙げ、その他の産業は6割から7割弱の企業が次点に挙げており、各産業別でも産業間格差が少なく、規模別、産業別からみても「アウトソーシング」よりむしろ一般的な対応策かと思われる。この背景には、再雇用制度による雇用によって賃金を大幅に減額(3割を超える減額)した人件費で、終身雇用制による企業内訓練で培ったその企業独自の特殊性のある知識・技能・経験を活用できるメリットがあるためと思われる。さらに、平成13年から公的年金の支給開始年齢が引き上げられるが、雇用と年金の連携が切実な課題となっていることも視野に入っているのかもしれない。

過去において55歳から60歳に定年年齢の延長が行われた際、その移行措置として再雇用制度等が活用されたが、少子・高齢化による労働力の減少を控え、また、雇用と年金の連携という視点からも「アウトソーシング」とともに各企業の対応策として再び活用されるのではなかろうか。

 

 

 

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