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II-1-2 油吸着材の吸油性能等の調査

現在、我が国においては「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」及び「同法施行規則」において、油処理剤及び油ゲル化剤とともに油吸着材が排出油防除資材として定められ、マット状及びロープ状のものに対しB重油を試験油として性能基準が定められている。しかし、流出油事故の大半がC重油であり、また、これらの油が海上に流出し長時間風浪に晒されることにより油中に海水を取り込みムース化し、ますます粘度が高くなることから、油吸着材の対象油も高粘度油とすることが認識されてきているが、高粘度油に対する吸油性能については、我が国に性能試験方法がないことからほとんど把握されていない。

また、近年、油吸着材の形状等が多種多様化し、マット型をはじめ、ブーム型、ピロー型、ルース型(ばら状)、ポンポン状のものが市販されているが、これら油吸着材の高粘度油に対する性能も把握されていない。

このため、これら油吸着材の高粘度油に対する性能試験方法を検討するとともに、性能試験を実施し、吸油性能等の調査を行うこととした。

昨年度は型式承認されているマット型の油吸着材について、運輸省船舶局長通達舶査第52号(昭和59年2月1日付け)の「排出油防除資機材の性能試験基準」(以下「舶査第52号」という。)に定められている油吸着材性能試験基準を参考とし、49,000cSt、17,000cSt、8,390cStのC重油(JIS K2205 3種1号)を試験油として吸油性能試験を行い、高粘度油に対する供試油吸着材の性能の一部を明らかにしている。

なお、油吸着材の分野では、通常「吸着」という用語は極めて広い概念で使用されているが、基礎的問題を取り扱う物理化学の分野では、吸着は分子、原子またはイオンが固体または液体の表面に保持されることを示し、明確にされている。油吸着材の吸着量では吸着以外の現象に基づく吸油も含まれていることから、今回の調査では概念的に混乱を招く「吸着」という用語を用いず、「吸油1)」という用語を、昨年と同様使用することとした。

 

1 試験条件

(1) 試験方法

我が国における油吸着材の性能試験方法は、前述のとおりマット状及びロープ状のものに対しB重油を試験油として定められているが、ブーム型やピロー型等に対する性能試験方法が定められていない。

このため、油吸着材の性能試験方法に関する文献及び本年度に実施した米国・カナダの油防除資機材の調査において得られた資料を基に委員会において審議し、米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials; ASTM)が定める油吸着材の吸着性能試験方法ドラフト版(以下「ドラフト版」という。)を参考とし、実施することとした。各タイプ毎の吸油性能試験要領等は以下のとおりである。また、ドラフト版を参考資料として本報告書に添付する。

 

 

 

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