近年、二重殻構造が増えてきたので、この事前検討が益々有効になってきた。
精度の良いブロックと悪いブロックでは、搭載工程の取付能率が3倍違う…とのタイムスタディ報告がある。あいだに一つ悪いブロックがあれば、隣接する2〜3ブロックに悪影響を及ぼすことも明らかになった。
ブロック精度の定量的追及は、結果として、立体的変形・歪みの防止に向けた取付順序・拘束仮付:組立溶接手順、搭載要領の確立など工作法の進歩を引き出しつつある。
以下、搭載に至る各工程での伸ばし、仕上について説明しよう。
2.1.5 撓鉄仕上げ
(略称:撓仕(ぎょうし)または曲仕(まげし)、ベンダーの意のB仕とすることもある):-
部品精度確保のため撓、曲加工完了後に、再マーキンして仕上切りする。
もっとも認識不足からか、現図による形状展開方法の不備、不適合…などのリカバリー(補い)を曲加工に負わせている造船所も、まだかなりあるようだ。別書『造船現図展開』を参照されたい。
1)フレームベンダー曲げでの「掴み代」
形鋼類の面内曲げで、端曲げ曲率が大きい場合の3点押し延長部をいう。掴み代なしでは、端部は必ず直線部を持つが、トレランス(許容限度)内なら無視している。
この関係を[図2.1.10 掴み代とトレランス]に示す。
縦肋骨構造方式では、ほとんどのフレームが掴み代を要しないが、横肋骨構造方式では、フレーム下端の曲りがきつく、掴み代なしにはムリ、焼曲げで補う必要がある。スクラップ率VS加工精度が相矛盾するので、最適組合わせを探って標準化しておく必要がある。曲りのきつい下端で左右舷を繋いで取材し、左右対象ベンダー曲げ後に切り離す工作法にすれば、掴み代を廃止できよう。
この対策判断も数値現図ではプログラム化できようが、ベンダー機種:機能、形鋼断面、端部曲率、掴み代、トレランスの相関については、まだ公刊された研究を見掛けない。