結局は現図床「原寸」が船体の証拠として残り、数値「原寸」は補助に止まる。コンピュータ化に対する古い疑念は温存され、技術向上への重い鎖となろう。
混用では、作業者の教育・習熟も二重になる。
二重になるより、別流れに分離する傾向となりやすい。つまり:-
年配/現図が解る作業者:ベテラン=手作業の人
若者/現図に弱い作業者:初心者=キーボードの人
この二層が、水と油のように融合しない。現図の本質が解る技術者なら、最も恐れる事態である。NC導入が仇になるのだ。
人的構成や慣行により全体精度も低きに流れる。
せっかくNC化に踏切り、加工精度の向上を狙っても、NC切断範囲はともかく、全体精度には、さしたる変化が見えないはずである。
このように、すべてが、どちらかというと従来からの手作業の方に凭れることになってしまう。もともとNC化と数値現図化は異なる概念である。この本質が混同され、現象面から誤解されてきたのが、この混用の原因であろう。目的と手段の逆転としてもよい。
小型船ほど、NC切断の効果は薄い。導入するのであれば、現図床を全廃する数値現図化でなければ意味がない。目的は原寸精度の飛躍的向上にある。
併用・混用の理由としては、管理や指導のあり方もあるが、システムの選定にも関わりがある。ここでは詳細な説明は避けるが、フェアリングの機能や部品処理機能の不備・非効率を、まず問いたい。
またシステムは常時メインテナンスされて、初めて使いものの道具になることも改めて訴えておきたい。導入したままではダメである。
1.3.3 不要情報の末整理
現在、必要性の疑わしいものの第一に“基準線”がある。
部品段階から多くのWL・BLがマーキンされてゆく。なぜか。
現図で作成する型定規に記載があるからである。
もし部品相互の位置決めのためなら両部材に含マーク、または一方の端部止まり位置が簡単にもう片方にあればよい。それなのに正規のWL・BLを描き「なにWL」などと能書きを入れている。
[図1.3.1 基準線記入]と[図1.3.2 「止まり」位置記入]を比較すれば、どちらが「現図+マーキン」の仕事が少く、端部位置が正確か。