高校1年の頃、蝶やクワガタ虫に飽き、渓流の魚採りに興味を移し始めていた。ある日、上流に遠征しようということになり、水温13℃・深さ3mの滝壷に素っ裸でダイビング。泳いでいた魚は大カワウソと思ったのか、スーっと底の石にむけて軟着陸、しなやかに岩陰に消えた。水はあくまで透明、水表に浮かび、水中眼鏡を通して目を凝らす。緑を帯びた褐色の背に黒い斑点模様の魚があちこちに伏せている。狙いを定め、大きく息を溜めて潜ると、背中側からは想像もしなかった姿が眼に飛び込んできた。銀白色の下地に刀紋を思わせるパーマーク、朱紅色をちりばめた優雅な姿。渓流の女王アマゴとの出会いである。この時がなかったとしたら?大きな分岐点であった。以来、渓流魚の種間競争の研究を続けている。1988年理学博士(京都大学)。日本生態学会、日本魚類学会、魚類自然史研究会所属。