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(B)海運事情と保有船主の実態
 ブラジルの経済にとり、海運業は非常に重要な地位を占めてきた。
 現在、ブラジルの貿易の97%は海洋、沿岸、河川を通じて行われており、ブラジル貿易の拡大もその基盤となる海運会社の活性化なしには達成することは難しい。
 ブラジルの海運業は、20世紀前半は政治不安と度重なる政策の変更のために、政府の支援が余り実施されなかった。
 第二次世界大戦後になり、ようやく海運業が国家の優先産業として見做されるようになり、政府により自国船優先主義や数々の船舶拡充計画が打出され、船舶建造のための融資も行われ、ブラジル海運業の育成が図られた。
 1958年には、商船隊基金(FMM)が設けられ、船舶建造融資制度が導入された。
 1967年には、自国船優先主義策が導入された。 (同盟下にある貨物積取比率の40%のブラジル国籍船が確保、貿易相手国籍船が20%、第3国国籍船が20%)。実際にはこの取決めは厳守されず、市場動向に沿って便宜置籍船や外国船の活用が行われた。
 1960〜70年代にかけては、これらの政策も奏功していたが、1980年代に入り、ブラジル経済の悪化のため、ブラジル海運業は全般的に不況に陥ってしまった。
 現在では、過去の保護政策を撤廃する傾向にあり、海運会社も生き残りをかけての競争を行っている。
 1990年には、外国籍船の内航沿岸輸送への参入が許可され、さらに、1997年には第2船籍登録制度(REB)が導入せれ、外国海運会社がこの制度の下で船舶を登録することを許可し、外国海運会社ヘブラジル海運市場での活動を促している。
 〔第2船籍登録制度(REB)は、1998年に施工された法令9.432によるものであり、外国海運会社が第二船籍登録制度の下で船舶を登録できることを許可し、ブラジル海運業に外国資本を積極的に誘致することを目的としている。
 外国海運会社は10年間のAFRMM(商船隊刷新用運賃附加税)支払猶予期間が与えられ、また、船長と第一級航海士がブラジル人であるとの条件の下で外国人乗組員の雇用も許可している。〕
 この制度の導入により、政府はブラジル国籍の増加を促進する新しい政策としているが、このような海運業の自由化、外国海運会社の市場参入は、ブラジルの中小海運会社にとって大きな脅威となり、経営困難に直面している中小海運会社にとっては、大きな痛手となりかねない。
 一方で、ブラジル経済の回復、ブラジル貿易量の拡大、メルコスール(南米共同市場)の締結など、今後ブラジル海運会社が再活性化するための好材料もあり、これらによるブラジル海運会社のヒジネス拡大が期待されている。
 ブラジルの貨物運搬量は日本、米国に次いで世界第3位であり、1990年政府が開放市場政策を実施し始めて以降、ブラジルの貨物運搬量は急速に増加している。
 ブラジル海運局の資料によれば、1995年の内航沿岸輸送の総貨物取り扱い量は、4,745万トンであった。
 沿岸輸送貨物の約80%が石油製品の輸送で占められ、.ブラジル国籍船が約60〜70%を占めている。
 この傾向はトンベースと船賃ベースに共通している。また、石油製品の輸送は国有会社Petrobrasなどにより行われているため、ブラジル国籍船による輸送の比率が外航船に比べてかなり高い。
 1995年の外航貨物の取り扱い量は約2`25億トンであり、トンベースでみるとその約67%が固体バラ積貨物、20%が液体バラ積貨物、13%が一般貨物、1%が冷凍貨物である。
 外航船では、沿岸輸送と対照的に外国船が70〜75%を占めている。また、外国用船の積取比率もブラジル国籍船より高い。
 外航貨物輸送市場では、圧倒的に外国海運会社;外国用船が市場を独占しており、自国船は余り競争力がない。
 一方、輸入貨物では、永い間ブラジル船(外国用船とブラジル国籍船)が主流であったが、 1993年頃を境に外国籍船が主流を占めるようになった。
 液体バラ積貨物のうち、ブラジル国籍船の積取比率が高いが、これは石油会社Petrobras所有船舶によるものである。

 

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