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(3)造船事情
 ウルグアイは、他の中南米諸国が経験したような近隣国との戦争がなかったため、軍事戦略面から自国船舶拡大の必要性がなかった。
 1970年代後半からは、中南米全体に自国産業保護政策施行の気運が高まり、ウルグアイにおいても、1977年に造船振興促進法が設定されているが、ウルグアイ造船業発展にはあまり効果は上がっていない。
 また、造船業者法に基づく、船舶造修に関連の機器・部品は無税で輸入ができるなど、税制優遇措置の施行にも係わらず、高コスト構造は改善されず、造船業は期待通りの発展を遂げていない。
 さらに、1978年には商船隊振興基金(FDMM)による融資プログラムが制定され、造船および修繕に対するローンを行ってきたが、その後の資金繰り困難により、1997年現在FDMMは機能を停止している。
 今後、メルコスール(南米共同市場)等の地域経済圏の活性化により、域内の船舶往来が盛んになれば、規模、労働力、技術などの点から競争力のないウルグアイの造船業は、一層厳しい状況に追い込まれることになる。
 一方、ウルグアイの造船業としては、イドロビーア(パラグアイ川、パラナ川)計画の発展に伴う河川輸送船の受注増加という明るい展望もある。
 これらの河川航路船は、河川の幅・深さの点から船舶の大きさに制限があり(2,000トンまでのバージが最適とされている)、ウルグアイ造船業の技術レベルでも十分に建造可能である。
 さらに、ウルグアイ造船業界が技術の近代化を図るため外資系会社との提携を強く望んでいる。
 ウルグアイは、外国投資を呼び込むための経済特別区が多く存在すること、財政金融システムが整っていること、輸入パーツが安全確実に入手できること、ラ・プラタ河川およびイドロビーア河川の河口に所在地を置けることなどの外資系子会社進出のための環境が整っている。
 このため、アメリカのミシシッピー河川航路専門の造船会社を始めとして、数社の外資系会社の進出が始まっており、ウルグアイ造船業の発展に繋がるものと期待される。
 ウルグアイでは、1970年代に総建造量2万トンを記録したこともあるが、現在建造されている船舶の殆どは50〜60m(500G/T)までの小型船が中心となっており、建造量は少なくなっている。
 また、商船よりも漁船およびレジャー船の建造がより多くなっている。
 ウルグアイの船舶修繕業の規模は、ブラジルやアルゼンチンより小さいが、内容ではパラグアイの修繕工場に勝っているため、パラグアイ貿易に携わる河川航路船の修繕の受注を多く受けている。
 外航船の修理については、ロシア、ポーランド及びアジア諸国の漁船がモンテビデオで修理していたが、近年では漁場が移動したため、それらの漁船はウルグアイに出入りしなくなっている。
 ウルグアイにおける主な造船所とその概要は、次の通りである。

 

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