日本財団 図書館



(B)海運事情と保有船主の実態
 ウルグアイの海運業が自国経済に占める比率は、他の南米諸国に較べて低い。
 これは、ウルグアイが長い海岸線を有しているという地理的条件に恵まれているにも係わらず、海運業がより競争力に勝っているブラジルとアルゼンチンの二大国に挟まれていること、更に、ウルグアイが羊毛、牛肉、皮革など畜産品の輸出に大きく依存する牧畜国であったため、政府の経済政策が牧畜業に重点をおいてきたことに起因する。
 1989年に文民政権が発足し、緊縮財政策のもと、1991年からは国有企業の民営化が始まり、同時に産業促進法及び外国投資促進政策が設けられた。
 1991年に政府は、年間約30万トンの貨物が輸送されるウルグアイ河川の重要性の観点から、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)において、ウルグアイ〜パラグアイ〜パラナ河川のイドロビーア発展計画を打ち出した。
 その結果、河川主要港のカセレス〜ヌエバ・パルミラ間の河川輸送状況が改善され、ウルグァイ経済での海運業は発展の兆しを見せはじめている。
 1995年にイドロビーア協定に加盟した国はブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビアおよびウルグアイであるが、同協定加盟国の主要港98港のうち、ウルグアイではモンテビデオの一港しか国の主要港としてみなされていないことと、イドロビーア河川で運航されている船舶の船籍の殆どがブラジル、アルゼンチンおよびパラグアイであることから、ウルグアイの存在は非常に小さい。
 ただし、ウルグアイはブラジルと国境を接しており、かつイドロビーア地域の河口に位置しているため、今後、メルコスール(南米共同市場)の発展に伴い、ブラジル向け貨物運搬量の増大が期待されている。
 しかし、ウルグアイ海運業が直面する問題は、次の通り数多く存在する。
 (1)ウルグアイ船舶が老朽化しているため、整備にかなりのコストが掛かり、運搬サービス全体がコスト高になっている。
 (2)ウルグアイ海運会社が所有するウルグァイ船籍の比率が極めて低く、(97年現在1隻のみ)、パラグアイ籍船が便宜置籍船として使用されている。(1996年にパラグアイが港湾税を大幅削減したためウルグアイ国籍の船の多くが、パラグアイ国籍となっている)
 (3)隣国のブラジルやアルゼンチンの2大国との政治的なかけ引きの中で、自国に有利な政策を導けない場合がある。
 (4)ウルグアイの海運会社は外国の労働者を雇用する傾向にあるため、海運企業経営者側と労働者組合の間に摩擦が度々発生している。
 (5)イドロビーア計画により今後の河川輸送の需要が伸びると予想されるが、季節により河川の一番狭いところでは約3mの幅しかないため、通過できる船の大きさに制約が生じる。
 ウルグアイには主要港が8港あるが、その殆どは運輸省傘下の港湾局(ANP)が運営している。
 モンテビデオ港は、ラ・プラタ河の河口に位置し、メルコスール域内でも地理的条件に恵まれ、ウルグアイ最大の港として今後発展していくことが期待されている。
 ウルグアイでの貨物取扱い量の約80%はモンテビデオ港で行われ、残り20%は主にヌエバ・パルミラ港とフライ・ベントス港で行われている。
 ヌエバ・パルミラ港は、パラナ川〜パラグアイ川システムの殻物専門港であり、フライ・ベントス港は林業製品を扱っている。
 また、1996年、モンテビデオ港を利用の27.5%の船舶はコンテナ船であり、一般貨物船の10・6%が次いでおり、17.2%が沿岸航路輸送船である。
 1996年に同港で取扱われた総コンテナ数は121,776個であり、その内訳は39.3%が輸出用、38%が輸入用であり、22.7%がトランジットである。

 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION