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(3)造船事情
 現在、モロッコには鋼造船の建造可能な造船所はない。
 修理造船所としては次の1社がある。

 このほか、カサブランカ、サフィ、アガディール、ケニトラ、モハメディアなどの諸港には、船舶修理また木造船建造の可能な小型造船所がある。
 また、港湾局所有のドライ・ドックを使用し、小型船の建造・修理を行っている。

(4)漁業事情
 モロッコは、3,446?に及ぶ長い海岸線と、大西洋・地中海の160万トンの魚介類の潜在漁業資源をもつと言われる豊かな海域(経済海域110万?2)を有し、年間約85万トンの水揚げ量をもち、水揚げ量としてはアフリカでは最高を誇っている。
 また、いわしの世界一の加工輸出国でもある。
 さらに、魚類のほかに豊かな海草の資源をもち、寒天の輸出国(主な輸出先は日本)でもある。
 約40万人が従事している漁業部門は、モロッコにとって燐鉱部門に次ぐ重要な外貨収入源となっている。
 水揚げ量のうち、約81%が沿岸漁業、18%が遠洋漁業によるものである。
 漁業従事者のうち、90%が沿岸漁業に携わっている。
 モロッコの漁業は1973年、海運投資法の適用による遠洋漁業の発展に伴って本格的に発展し始め、81年には貿易省から漁業省が独立し、84年には輸出を促進するべく漁業に関する本格的な財政援助策がとられている。
 モロッコ経済水域への入漁権も貴重な外貨獲得源であり、これを合わせると漁業関係の外貨収入は全体の26%に達する。
 1995年の漁業生産は、前年比12.5%増の846,201トンで、食料輸出額の約50%、輸出総額の約15.6%に相当する。
 沿岸漁業による漁獲高は前年比19.7%増、遠洋漁業による漁獲高は前年比15.5%減となっている。
 また、水産物加工については、地中海域漁業による水揚げのうち加工用(缶詰を含む)に約70%が当てられるが、大西洋漁業はその大部分が直接消費される。
 魚介類缶詰は主にヨーロッパ向けに輸出されている。(ただし、ヨーロッパヘのいわし輸出の25%非関税の制限粋は年間17,500トン。)
 近年、魚介類の輸出量の増加はめざましく、80年3.7億ディラムから88年には30億ディラム、94年には57億ディラムと急増している。
 漁業省は、今後の輸出続伸を見込んで、ヨーロッパ市場統合に向けて水産加工組合UNICOP(Union Nationale des Industries de la Conserve de Poisson)を結成して、水産加工品の輸出促進を図ろうとしている。
 モロッコにおける、漁業に関する協定、融資および経済援助の対外関係は、次の通りである。

(1)EU関係
1983年、モロッコに対する工業開発援助を条件として、モロッコ政府はスペイン政府に対しモロッコ経済水域内でのスペイン漁船による漁業行為を認める内容の協定締結。
 この協定の対象国は、1986年のスペインのEU加盟以来、EU加盟国に拡がった。
 1988年、モロッコ経済水域での700隻のEU籍漁船の入漁とひきかえに、年間4,830万ドルの入漁料を受けとる4カ年協定をEUとの間で締結。
 モロッコ経済水域における水産資源保護に関してもEUとの間で協定を締結、最終的に92年から年に2ヶ月の禁漁期間を設定。
 4カ年協定の期限切れの92年には、新たにスペイン(650隻)、ポルトガル(50隻)、その他(36隻)のモロッコ経済水域での漁業権と交換に1億3,100万ドルが支払われる協定を更新。
 この協定には港の整備改善、市場の開発に関する事項も含まれている。
 1995年が期限のこの協定の更新時に、モロッコ政府はスペインの協定違反、モロッコ領海の水産資源保護・地方の水産業の市場拡大を理由に、ヨーロッパ漁船の同水域での年間漁獲高の50%削減を求めたが、スペインの猛反撃にあい、最終的に1999年までの4カ年協定を締結し、ヨーロッパ籍漁船数を暫定的に減少することで和解。

(2)ロシア関係
 1991年、モロッコ政府はソ連との間で漁業協定を締結、この協定にはソ連の漁船のモロッコ領海内での漁業権、ソ連漁船のモロッコの港への寄港、漁船を修理する権利、ソ連研究者による同領海内での水産資源調査、ソ連とのジョイントベンチャー等が含まれている。
 1991年にはソ連漁船による漁獲量750,000トン(うち、100,000トンはジョイントベンチャー漁船による漁獲量)、領海内のいわし漁業域での漁業行為の禁止、モロッコに対する入漁料としてソ連漁船漁獲高の15%の支払、モロッコ水産研究所への調査船2隻、漁業訓練船1隻の無償供与、モロッコ製魚缶詰のソ連市場への輸出に係る関税特恵などが取り決められた。
 1992年のソ連崩壊後も、ロシアは旧ソ連時代の協定をそのまま引継ぐことで、モロッコと合意、また旧ソ連衛星国のバルト海沿岸国(リトアニア、ラトビア、エストニア)との間で漁業協定を締結。
 1995年、ロシア漁船40隻のモロッコ西側海岸における3カ年の漁業協定を更新。  モロッコは、順調に伸びている漁業部門のヨーロッパ以外の市場拡大を目指しており、その結果、EUのモロッコ領域内における漁獲量が削減されており、これに対しEU側がいらだちをみせているのが現状である。

(3)西アフリカ諸国関係
 1991年、西アフリカ諸国との間でアフリカ大陸大西洋沿岸における水産資源の保存、漁船数の制限、漁業部門の商業、経営活性化、合同調査などについて合意。

(4)融資(スペイン、IFC)
 モロッコ漁業の発展により、同部門への国内外からの投資は急速に増加しており、1991年には前年の3倍になっており、その大部分が遠洋漁業用漁船の取得(78隻)にあてられている。

 (i)1990年、スペイン銀行の融資(630万ドル)により、エナルス漁業会社(Societe Ennasr de Peche, SEP)が、遠洋漁業用の冷蔵トロール船を購入。
 (ii)1990年、国際金融公社(International Finance Corporation, IFC)の融資(210万ドル)により、エナスル漁業会社が、遠洋漁業用の冷蔵トロール船を購入。

(5)日本からの援助
 モロッコ漁業に対する援助は、日本が群を抜き、1995年における外国からの対モロッコ援助総額の16%でフランスに次いでいる。
 日本からの援助は、その殆どが無償供与であり、モロッコの漁業開発に貢献している。
その概要は次の通りである。

 (i)1991年、漁業施設購入(420万ドル)
 (ii)1991年、アガディールに遠洋漁業船の修理工場建設(1億2,000万ディナール)
 (iii)1993年、アガディール地方の漁業拡大のための漁船員訓練センター設備購入(400万ドル)
 (iv)1993年、農業信用金庫の農業、漁業セクター(1億2,700万ドル)
 (v)1996年、モロッコの2つの漁村に、ハシケの建造、EU規格の衛生規格に適合した魚市場の建設(1億1,900万ディナール)

 モロッコの漁船総数は、3,068隻(沿岸漁業2,609隻、遠洋漁業459隻)、そのほかに12,000隻の小型漁船がいるといわれている。
 これらのうち、1997年12月末現在における100G/T以上の鋼造漁船は、393隻、129,983G/Tで、平均船齢は14年である。
 1980年の69隻、20,319G/Tから年々順調に拡充されてきている。

 

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