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(1)一般事情
 ナイジェリア連邦共和国は、南はギニア湾に面し、西はダオメー、北はニジェール、東北はチャード、東はカメルーンと、それぞれ国境を接している。
 国土面積は、923,768k?(日本の約2.45倍)、人口は1億1,502万人(96年央推定)で、首都をアブジャ(人口31万人)におく。
 言語は、英語が公用語であるが、北部の諸州では英語とともにハウサ語も公用語となっている。
 このほか、ヨルバ語など原住民の言語は、方言も含めて約150〜200種類もあるといわれ、日常生活では、それぞれの種族語が使用されている。
 宗教は、全人口の約48%がイスラム教(北部)、約35%がキリスト教(南東部)、その他が土俗宗教である。
 ナイジェリアは、石油輸出機構(OPEC)に参加している石油大国であり、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の有力メンバーとして積極的なアフリカ外交を展開しているが、政治情勢は緊張している。
 民主化の遅れに加え、元大統領のクーデター未遂事件の裁判や少数部族の活動家の処刑問題等の人権侵害事例をめぐり国際的な圧力が強められている。
 政府が95年10月に発表した民政移管時期も3年間延期されており、民主化と民政移管問題が最大の政治課題となっている。
 ナイジェリアの経済は、外貨収入の98%以上、歳入の80%以上を原油に依存している。
 オイルブームの後、放漫財政のつけ等から深刻な慢性的財政赤字、巨額の累積債務に直面した。
 86年9月の世銀SAP導入後、民主化、貿易自由化政策等で一時経済が持ち直したが、90年以降再び悪化した。
 95年以来、規制緩和路線を採用しているが、二重為替制度の維持や民営化の遅れなどから、IMFとの債務削減交渉の早期再開は困難視されている。
 95、96年と堅調に推移した原油価格やインフレ対策が効を奏したことにより、経済は低迷から回復に転じている。
 設備投資や消費も緩やかではあるが回復に向かっている。
 本格的な景気対策を打出すためには、320億ドル(96年6月)にのぼる対外債務の削除が不可欠な問題となる。
 なお、96年末には、“VIS10N-2010"と称する包括的な経済、社会・政治プログラムが開始されている。
 ナイジェリアは元来、ココア、コーヒー、パーム、ゴム等の農産品の輸出収入に依存する農業国であるが、1970年代に入ってからは産油国として台頭し、ぼう大な原油輸出収入を背景に石油精製、石油化学、製鉄などの工業プロジェクトを中心に工業化が進められた。
 この結果、石油採掘・石油精製などの生産がGNPの約35%を占め、政府財政収入の80%を賄う石油依存の経済体質に変わってきている。
 このため、原油の世界的需要や価格の変動による経済全体への影響を受け易くなっている。
 1996年のナイジェリアの国内総生産(GDP)は、307億5,000万ドルで、伸び率は3.3%を記録し、一人当りのGDPは240ドルとなっている。
 GDPの産業別構成をみると、農林水産部門33.3%、鉱・工業部門30.3%、サービスその他34.7%となっている。
 農業部門のGDPへの寄与率は、60年代に66%を占めていたが、その後、石油の生産量と価格の高騰によって、80年代は20%へと低下した。
 農業が基幹産業から外れてはきたが、労働人口の60%が従事しており、現在でも依然として重要産業であることに変わりはない。
 換金作物は、ココア、パーム核、パームオイル、天然ゴム、綿、落花生などである。
 国内消費作物としては米、きび、とうもろこし、カサバなどがある。
 しかし、同国の人口1億1,502万人の食糧を賄うには生産は十分ではなく、毎年大量の食糧を輸入している。
 これは、高い人口増加率に見合う農業投資が資金不足により行われないためで、政府はようやく農業振興に力を入れ始めている。
 林業は、国土の3分の1以上が森林地帯で、森林資源に恵まれてはいるが、十分に開発されていない。
 マホガニーなど輸出用木材や産業用木材を生産しているが、近年国内需要が増大しているため輸出は伸びていない。
 ナイジェリアは鉱物資源が豊富であり、石油、天然ガス、錫、石炭、鉄鉱、ウラニウムなどがある。
 石油は国家歳入の約80%、輸出の98%以上、GDP(95年)の17.4%を占める重要な資源である。
 ナイジェリアの原油生産は、95年は日産206万バレルを記録している。
 現在、石油の埋蔵量は210〜880億バレルと推定されている。
 天然ガスも大規模な埋蔵(推定1兆4,220億?)が発見されている。
 石炭は、かつてナイジェリアにおける第一の鉱産物であったが、1959年の90万トンをピークに減産傾向にある。
 錫も高品位の鉱石が減少したため、生産量は下降傾向にある。
 鉄鉱石は、76年にラゴス北方200マイルの地毛で4億トン、ついで80年にはタワラ地方で推定4億2,000万トンの埋蔵が発見されている。
 採掘された鉄鉱石は、主としてアジャオクタ製鉄所に供給されているが、粗鋼生産能力は低い。
 なお、ナイジェリアの鉱業部門のGDPは95年は8.2%であり、1989〜95年の期間に年率2.6%、95年では0.8%の成長を示している。
 製造業は、繊維・織物、ビール、履物、精製油、鉄鋼、タバコ、パルプ、紙、セメントなどが主なものである。

 

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