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2.事業経過

2.1 沿岸域環境保全リスク情報マップ作成に至る経緯

 2.1.1 センシティビティ・マップが求められる背景  大規模油流出事故が発生した際にその被害を最小限に抑えるためには、必要な情報の迅速な収集、防除関係者間の密接な連絡と協調体制の確保、限られた防除資機材と要員の適切な動員と配備など、事故に対する的確かつ総合的な対応が要求されている。
 さらに、一昨年1月に日本海で発生したナホトカ号による重油流出事故、同年7月に東京湾で発生したダイヤモンドグレース号による原油流出事故を例にとるまでもなく、油流出事故における防除活動は、官民が一体となり、総力を挙げて取り組むことが必要である。
 その際、沿岸域の自然環境及び社会・経済活動の状況並びに汀線の種類によって異なる油汚染に対する脆弱性の違いなど、油汚染により沿岸域が受ける被害を正確に把握するために必要な情報などが、例えば情報図などの形で共通に提供されれば、迅速 かつ効率的な防除活動を実施していく上での支援手段の一つとして大きな役割を果たすものと考えられる。
 また、このような情報は、平時においても沿岸域の環境保全活動及び油流出事故後の回復状況のモニタリング調査等の実施に際しての有効な基礎資料となる。
 既に北米や西欧をはじめとする一部の国々では、このような機能を有するセンシティビティ・マップの整備が行われており、油防除活動の支援手段の一つとして積極的に活用され効果を挙げているという。
 わが国の沿岸域は豊富な水産資源及び多様な生物相をはじめとする自然環境に恵まれるとともに、多種多様で高度な社会・経済活動が稠密かつ活発に営まれている。
 最近、わが国の原油の輸入量は横這い傾向を示しているが、内航タンカーの船型の大型化や海洋性レクリエーション活動の急速な発展などに伴い、流出油事故の際の沿岸域被害ポテンシャルは依然高い数値を示している。
 近年わが国においては、環境基本法の制定により健康で恵み豊かな環境の維持及び発展に向けての努力が求められている中、ラムサール条約会議のわが国での開催などを通じ国民の自然環境保全に対する関心はますます高まりつつある。
 さらに前述のナホトカ号による重油流出事故は、大規模海洋汚染災害の経験が少ないわが国にとって、その対応の難しさを認識させる結果ともなった。
 こうした状況の中、海洋環境保全を目的としたセンシティビティ・マップの整備・普及を進めてゆくことは、環境保全を願う国民の声を反映したものであり、正に時宜を得たものであると考えられる。

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