揺れない浮体構造物の研究 平成10年度報告書
(財)沿岸開発技術研究センター
1. はじめに
生活の豊かさと自然環境の豊かさを両立させる手段の一つとして、浮体構造物を用いた海洋空間の有効利用がある。すなわち、浮体構造物は、発電所、塵焼却設備、物流基地など国民生活に必要な設備の設置スペースとしての利用法の他に、レジャー、マリンスポーツ、魚釣り公園、水際での散策など、国民が水に親しみ、潤いを回復する空間としての利用も期待されている。さらに、浮体構造物は海面に浮遊しているため海水交換性もあり、埋め立て工法に比較して、周辺環境に与える影響が極めて小さいという特長がある。
一方で浮体は動揺するという特性があり、浮体構造物の適用範囲を拡大するためには、動揺量を低減して、人及び設備への影響を小さくする必要がある。
そのため、浮体の動揺を機械的及び構造的に制御する技術、及び係留方法の工夫により係留にかかる負担を軽減する技術の実用化が望まれている。これにより、快適性のみならず安全性及び経済性の向上にも寄与することとなる。
本研究は、海洋空間を快適、かつ、安全に利用可能とする技術を提供することを目的として、浮体構造物の動揺を各種の方法により制御する技術の検討を行うものであり、本年度は1]抽出した揺れない浮体構造物のアイデアに対する理論検討結果に基づく絞り込み、2]水槽実験3]シミュレーション試行及び4]揺れない浮体構造物の設計法基礎検討を行った。
この研究に際して、広範な識見と高度の技術経験を有する学識経験者を中心とする委員により構成される委員会を設置し、上記研究に対する指導・助言を得ることとした。ここに平成10年度の研究内容を報告する。
2. 研究の概要
2.1 研究の進め方
本研究は、(財)沿岸開発技術研究センターが設置した委員会(委員長:広島大学工学部高木幹雄教授)の指導・助言を頂きながら実施した。研究期間は平成9年度から3ケ年の予定である。(研究フローは、図2.1に示すとおりである。)