あいさつ
最近、浮体構造物を活用して海洋空間を有効に活用していくということが各方面で注目を集めております。
浮体構造物は海面に浮遊しているため海水交換性もあり、埋め立て工法に比較して、周辺環境に与える影響が極めて小さいという特徴があることから、浮体構造物は海洋空間の利用と自然環境を両立させる手段の一つとして、発電所、塵焼却設備、物流基地などの他に、レジャー、マリンスポーツ、魚釣り公園、水際での散策などへの利用も期待されています。
しかしながら、浮体には動揺するという特性があり、浮体構造物の適用範囲を拡大するためには、動揺量を低減して、人及び設備への影響を小さくする必要があります。このため、浮体の動揺を機械的及び構造的に制御する技術並びに係留方法の工夫により係留にかかる負担を軽減する技術の実用化が望まれています。
以上の状況から、(財)沿岸開発技術研究センターは平成9年度から3ケ年の計画で浮体の形状、制振装置、係留方法の工夫により動揺を低減できる浮体構造物の研究を開始しました。
本年度は昨年度抽出した揺れない浮体構造物のアイデアについて水槽実験を行い、その減揺効果を把握することを中心に研究を進めましたが、水槽実験の結果から十分な減揺効果が得られております。また、このような研究により浮体の動揺を低減することで、快適性のみならず安全性及び経済性の向上にも寄与することが期待されます。
本研究は、競艇公益資金による日本財団の補助事業として実施したものであり、本報告書は平成10年度の成果をとりまとめたものです。本研究の実施に当たっては、広島大学工学部の高木幹雄教授を委員長とする委員会を設置し、そのご指導のもとに研究を実施しました。また、本研究は三菱重工業(株)のご協力の下に実施しました。これら関係者の方々に心から謝意を表します。
平成11年3月
財団法人 沿岸開発技術研究センター
理事長 野田節男