3船舶対応技術の研究
3.1船舶対応技術の研究
3.1.1負荷変動対応技術の研究
a)運転制御システムのシミュレーションプログラムの作成
1)概要
舶用主機として使用されるガスタービンの制御システム開発を目的として、制御方式の検討を行うためのシミュレーションモデルを開発した。また、制御系の基本設計を行うとともに、制御系シミュレーションによる基礎検討を実施した。
2)シミュレーションモデルの開発
ガスタービンのシミュレーションモデル開発は平成9年度より着手しており、再生器および船体を除いた2軸式ガスタービンの基本構成モデルについては、平成9年度に要素モデルの基本設計および結合シミュレーションを実施している。
平成10年度は、設計データなどをもとにシミュレーションモデルの精度を高めると共に、未着手であった再生器モデルと船体モデルの作成を実施した(図3.1-1、図3.1-2参照、図3.1-3参照)。
3)制御系の基本設計
2軸式ガスタービンに最適な制御方式を研究・開発するにあたり、制御系の構成について検討し基本設計を実施した。
ガスタービン制御系の主制御量は出力軸(パワータービン軸)の回転数であり、そのフィードバック制御器を主制御部に設けた。また、2軸式ガスタービンでは負荷の増減に対しガスジェネレータ軸の回転数が増減するため、負荷の急増・急減時には制御系はガスジェネレータ軸を急加速・急減速させようと燃料弁開度を急変させるため、サージング・吹き消えを引き起こす。これを防止するために、ガスジェネレータ軸に対する加速制限・減速制限を行うための制御器を設けた。さらに、ガスジェネレータ軸回転数・排ガス温度を運用の許容範囲内に制限するための制御器を設け、これらの低位選択・高位選択により燃料弁開度指令を決定する構成とした。
4)制御系シミュレーション検討
上記制御系をシミュレーションモデルに組み込み、その制御特性について検討するための制御系シミュレーションを実施した。
図3.1-4、図3.1-5、F型ガスタービン+固定ピッチプロペラの場合について、負荷の急増・急減に対する制御特性をシミュレーションした例である(固定ピッチプロペラの場合には、出力軸回転数を変えることにより負荷の増減が行われる)。シミュレーション結果から、サージング・吹き消えを発生させるような急激な燃料変化を起こさないように、ガスジェネレータ軸を加速・減速させていることが確認された。
今後は、部分負荷効率の最適化なども考慮した制御系へと発展させるとともに、ガスタービン本体の設計情報を反映して制御系の各種パラメータの調整を行う。