(3) 砕氷船タリフは総コストの中の最も重要なパラメタである。現在最大20,000GTまでに対する砕氷船タリフが設定されている。冬期の航海がより長いエスコート日数を必要とするが、冬のタリフは夏のタリフよりもわずかに安い。このシミュレーションでは4.89〜5.45$/GTのタリフが採用された。もし、5.0$/GTよりわずかに安いタリフレートが採用されれば、このシミュレーションで仮定した条件の基ではNSRは商業航路として経済的に成り立つと考えられる。タリフレートに関してはさらなる議論が必要であり、季節や砕氷能力、さらには待機時間と砕氷船の待機位置等のパラメータについても考慮される必要がある。
(4) NSRの保険費用はSuezルートの2倍を仮定している。事故や船体損傷データはINSROPプロジェクトで収集されたが、いずれのレポートも1航海のリスクを定量的には提示していない。それゆえ、合理的な保険費用を見積もるのは現状では困難である。
(5) NSRとSuezルートを適切に切り替えると所要経費が著しく改善される。航路の切り替えを実現するためには、船がNSRに入る1ヶ月か2ヶ月前に氷況を予測する高度な衛星による航行支援技術が開発されなければならない.。また、船会社と貨物所有者との契約には、この航路切り替えシナリオが考慮される必要がある。
(6) AARIから提供された氷況データは、タリフレートや技術的な評価を議論する良い材料になる。氷況データはINSROP GISに組み込まれてユーザーに配布される予定である。
(7) Ice indexの概念は、氷況データと船速アルゴリズムをリンクするために、CASPPRで導入されたice numeralを参考にして修正を加えたものである。積算Ice index用いると、与えられた氷況に対して、おおよその船速を予測することが可能である。積算ice indexはice indexに航路のセグメント長さを乗じる事により求められる。積算ice indexはNSRでの航海の難易度を定量的に表す指標として利用可能である。航海難易度はロシアの文献では慣習上「heavy, medium, light」の3種類で言い表される。航海難易度を表すのにice indexは有用である。
(8) 本シミュレーションによれば、ハンディサイズバルカー「が砕氷船のエスコートを受けながらNSRを運航することがfeasibleであると推定される。