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4.あとがき

超電導電磁推進船「ヤマト 1」の海上航走実験の成功により、超電導電磁推進装置が船舶の推進装置として使用できることが実証されたが、その実用化のためには超電導電磁推進装置の高出力化が必要である。

そこで、平成6年度から「超電導電磁推進装置の高出力化に関する調査研究」事業を実施してきたが、本年度はその調査研究に加えて、内外の文献や会議資料等に基づいて超電導電磁推進装置に関連する技術の開発動向について調査を行った。

超電導電磁推進装置の高出力化にとって最も重要な高磁界用超電導線材については、Nb3Sn、Nb3Alおよび酸化物超電線材の開発が行われている。

Nb3Sn線材は臨界電流に対する歪みの影響が大きいため安定化材を補強して耐電磁力特性を上げる開発や、フィラメント径 4.3μmの線材を採用した15Tの冷凍機冷却超電導磁石の開発などが行われている。また米国ローレンス・バークレイ研究所の高磁界実験装置に使われている内径50mmのダイポールコイルが13.5Tの磁界を達成している。

Nb3AlはNb3Snに比べて臨界温度が高く、応力や歪みよる特性の劣化が少ないことからNb3Snに替る線材として期待されている。現在16〜24Tの高磁界中で適用可能なNb3Alの実用化を目指して開発が進められており、1.8Kに冷却した場合には、磁界23.5Tの下で臨界電流密度200A/mm2のような高磁界通電特性をもつ線材も得られている。

一方、酸化物超電導線材については、現在ビスマス系の開発が主流で、長さ1200m、臨界電流密度17800A/cm2のものが得られている。またコイルとしては銀シーステープを使った外径292mm、内径80mm、高さ200mmのコイルがコイル温度15Kで7Tの磁界を達成している。1994年にコイル内径40mmであったものが、95年に60mm、97年に80mmと次第に大きくなっているが、実用化のためには更なる大型化や信頼性の向上などを図る必要がある。

1986年に発見された高温酸化物超電導体は今世紀最後の大発見といわれ、世界中を超電導フィーバーに巻き込んだが、異方性や安定性の問題などから一時のフィーバーも鎮まり、地道な研究が進められている。高温超電導体とはいいながら液体窒素で使用すると臨界特性が著しく低下するため、現在のところ液体ヘリウム温度に近いところで使用せざるを得ないなど解決すべき課題は多いが、臨界温度の高い超電導体は理論的には臨界磁界も高いといわれていることから、強力な磁界が必要な超電導電磁推進船にとって酸化物超電導体の早い実用化が期待されるところである。

我が国の超電導に関連する技術レベルは高く、特に高磁界用超電導線材の開発やコイルの製作技術については貴重な経験と豊富な実績がある。これらを基盤にして高磁界用超電導コイルの開発が飛躍的に進み、超電導電磁推進船の実用化が促進されることを期待する。

 

 

 

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