
らくだい生の輝き:演出/熊井宏之
へんな世の中になってきたもんだと、近頃つくづく思う。眠れない子どもがふえてきたのだそうだ。
食欲のない子どももふえてきているんだそうだ。
そんな子どもたちを見ると「なんだ、子どものくせに!もっとちゃんと寝なさい。しっかり食べなさい!」と、おとなはつい腹をたててしまう。でも、考えてみると、これは、おとなのほうがまちがっているのかもしれないのだ。だって、今の世の中がひどくイビツになってきたとはみんなが言ってることだし、そうだとすれば、そのイビツをいちばん敏感に感じとってしまうのは、おとなよりずっと柔らかな心をもっている子どものほうにきまっているのだから。
ところで、この劇の主人公たちは、とにかく、「一日中、おなかをすかしていて、眠くてしかたがない」子どもたち、現代の少数派なのである。そんな彼らが、ヒョンなことから、スパルタ教育で鳴る秩父忍術学校に入学するところから劇は始まるのだが、まぬけなこの三人組は、ここでも当然らくだい生である。
その彼らの奮闘ぶりはこのお芝居を実際に観ていただく他にはないのだが、この劇のおしまい、もしかしたら、ほんとにもしかしたら、このらくだい生諸君の心のなかにひそむ、ほんとうの人間のやさしさ、おかしみを感じとっていただけたら・・・・・・と、そんなことを願いながら、今、汗かき、ベソかき、稽古は続けられている。